政策・経営研究39号最終
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なぜTPPが必要なのか61である。消費増税前の駆け込みと反動を除いてみると、消費の伸び悩みが始まったのは2013年ごろのようだ。その背景にあるのは、消費増税の影響も含めた消費者物価の上昇である。実質雇用者報酬が伸び悩むにつれて消費も頭打ちとなっている。デフレのもとでは実質ベースで見ると押し上げられていた個人消費であるが、物価上昇に対する脆弱性を一段と強めていたと言うこともできよう。アベノミクス登場後、名目雇用者報酬の増加ペースがやや高まっているが、実質の雇用者報酬は伸び悩んでいる(図表15)。これは円安の影響で輸入物価が上昇し、消費税率引き上げの影響も加わって、消費者物価が上昇したためである。幸いにして、原油価格はじめ資源価格が下落したため物価が再び上昇しなくなり、足元では実質雇用者報酬も持ち直してきているが、ここ3年程の頭打ち傾向は脱していない。2%の物価目標は達成していないが、消費増税の影響も含めた物価の上昇は個人消費にとってはマイナスに作用したと言える。もっとも、原油価格が急落して消費者物価が上がらなくなったので、個人消費は腰折れせずに停滞程度ですんでいるとも言える。名目賃金が多少は上がるようになったとはいえ、小幅な上昇にとどまっている。物価上昇に対する脆弱性はこれからも続くだろう。中国経済の減速は続いているが、原油等資源価格は下げ止まりからやや反発してきている。資源価格はしばらく低い水準での推移が続きそうだが、多少なりとも上昇してくれば、消費者物価を押し上げる要因となるので注意が必要だ。リーマンショック後の日本経済は、従来型の成長メカニズムがうまく働かなくなり、定常状態が続いている。政府は、アベノミクスの政策効果によって経済を元気にしようとしているが、思ったような成果が出てこない。アベノミクスは従来型の経済政策と基本的な考え方は同じである。金融緩和、財政出動、成長戦略という3本の矢は、実はオーソドックスな経済政策の組み合わせである。金融緩和を大胆に展開したという点が特徴と言え、円安・株高が急速に進展したものの、日本経済が活力を取り戻したというわけではない。(1)公共投資は消化するのが大変高度成長期が終わって以降の日本経済においては、需要不足との戦いが主たるテーマであった。公共投資の増加等財政支出の拡大は、需要不足を補う政策手段としてよく使われてきた。公共投資の拡大は、個人消費や設備投資等の需要を誘発する乗数効果がかつてのようには働かず、経済を刺激する効果が低下していると言われている。それでも、公共投資が追加されることによって需要は確実に増加し、経済成長率が押し上げられる。公共投資のウェイトは低下したとはいえ、GDPの5%程度を占めている。前年に比べて公共投資が10%増えれば、経済成長率は0.5%押し上げられる。たとえば、リーマンショック直後のような需要の急減に対して、財政出動によって需要を追加することは、経済活動の腰折れを防ぐという意味では効果的かもしれない。ただ、その効果は一時的であり、公共投資を拡大し続けないと、成長力を押し上げる効果は続かない。巨額の財政赤字を抱える日本において公共投資を増やし続けることは難しい。持続的な成長を実現するために公共投資等の財政支出に依存するという政策は現実的ではない。最近では別の問題も出てきている。公共工事を追加しても円滑に消化できないという問題だ。90年代初めにバブルがピークをつけて以降、建設投資金額は減少基調を続けている。過剰な供給力を抱えた建設業は雇用者の数を減らしながら過剰供給力を調整してきた(図表20)。ここ数年は、東日本大震災の復興需要、さらには東京オリンピック関連のプロジェクト等建設投資は持ち直している。これまでリストラに努めていたこともあり、建設関連での人手不足は急速に強まっている。有効求人倍率が景気動向指数の動きとかい離して上昇を続けていることはすでに見たが、中でも建設関連の有効求人倍率は大幅に上昇しており、人手不足が深刻なことがうかがえる3アベノミクスでは変わらない日本経済

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