政策・経営研究39号最終
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なぜTPPが必要なのか63り、数年前までは金融機関同士で資金を融通しあうコール市場の無担保コールレート(翌日物)であった。いずれにしても金利体系の大本になる金利を政策金利として引き下げることによって、預金金利をはじめとする銀行にとっての資金調達コストを低下させ、貸出金利の低下を促すというのが金融緩和のスキームである。結果として、貸出が拡大し経済活動が活発になれば、金融緩和の効果があったということになる。バブルが崩壊した後、日本の政策金利はほぼ一貫して低下してきた。すなわち金融緩和が続いていたことになるが、経済成長率が低下傾向を続けていたことを考えると、金融緩和が景気刺激効果を期待通りに発揮していたとは言い難い。金融を緩和すべきだという政府や政治家からの圧力、マーケットやメディアからの催促に押される形で金融緩和を繰り返してきたが、一時的に株価が上がったり、円安が進んだりという金融市場への影響があったものの、実体経済にはほとんど影響がなかったのではないか。景気が過熱して資金需要が旺盛な時には、金利の引き上げという金融引き締め策が効果を発揮する。金利を上げすぎて経済を冷え込ませてしまうというリスクはあるが、効果が出ないということはない。しかし、資金需要が低迷している時に多少金利を下げても借り入れ需要はなかなか増えてこない。大幅に金利を引き下げれば、資金需要は拡大するかもしれないが、度が過ぎればバブルが再燃する。小刻みに金融緩和を繰り返してきたことによって、バブルを引き起こさない代わりに、金利の引き下げ余地がないゼロ金利状態に至ってしまった。もはや金融緩和の余地がないという状況に追い込まれて考え出されたのが量的緩和である。金利の下げ余地がないのであれば、世の中に出回るお金の量を増やせばよいということだが、これは無理がある。資金需要が低迷しているところに、無理に資金を供給しようとしても、お金は世の中に出ていかない。金利を下げてもお金を借りようという人がなかなか増えないのに、金利の下げ余地がなくなってきたのであれば、いくらお金が余っていますと言ったところで借り入れを増やそうという気持ちにはならない。量的緩和と言っても、実際に目標として採用された指標は、金融機関が日銀に預けている日銀当座預金残高であった。その後、黒田総裁のもとで2013年4月に始まった量的・質的金融緩和では日銀当座預金残高に市中で流通している現金を加えたマネタリーベースが目標となったが、現金の増加はほとんど期待されておらず、実質的には日銀当座預金残高が目標となっている。たしかに、日銀当座預金残高は当座預金に利息をつける等無理をすれば増やすことは可能であった。だから、政策目標として採用されたのであろうが、日銀当座預金が拡大することと世の中に出回るお金の量が増えて経済活動が活性化されることはまったく別である。今や、マネタリーベースの規模は380兆円まで膨らんでいるが、経済活動が活発になっているわけではない。2014年10月に強化された量的・質的金融緩和政策では、年間80兆円のペースでマネタリーベースを増加させることになり、同時に同じ金額で日銀が保有する長期国債の残高が増えていくように買い入れを行うようになっている。つまり、日銀が長期国債を金融機関から買い入れ、金融機関がそのお金を0.1%の金利が付与される日銀当座預金に預けることによってマネタリーベースの増加目標が達成される構図になっていた。しかし、このスキームにも限界が出てきた。長期国債の保有残高を年間80兆円増やそうとすると、償還を迎える国債が年間40兆円あるため、120兆円の国債を買い入れないといけない。これは長期国債の年間発行額(新発債+借換債)に相当する規模である。日銀は、買い入れた国債を満期まで保有するので、市中に出回っている国債の量(流動性)が少なくなってくる。買入れ規模をさらに増やすような追加金融緩和を行うことはもちろん、この規模での買入れを続けることにも無理があるとの指摘がなされるようになってきた。こうした量的・質的金融緩和政策の限界を解消することを目的に本年1月に導入が決定されたのがマイナス金

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