政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定64季刊 政策・経営研究 2016  vol.3利政策(「マイナス金利付き量的・質的金融政策」)である1。残念ながらこの政策にも金融緩和効果は期待できない。日銀が高値で買い入れてくれる国債の利回りはマイナス金利となっているが、通常の預金金利や貸出金利は多少低下しているものの、マイナスにはならない。量的金融緩和もマイナス金利も、金利の低下余地がなくなっているという金融政策の限界を打ち破ることはできない。「金融を緩和すれば景気が良くなる」という過去の常識は通用しなくなっている。(3)円安になっても輸出が増えない金融緩和は、貸出金利の低下によって借り入れが拡大して、経済活動が活性化することを目指すものだ。しかし、日本では、金融を緩和することによって円安が進むことに対する期待も強いようだ。前述の通り、国内の資金需要が低迷する中、金融政策による通常の景気刺激効果は期待できないのだが、それでも円安が進むことによって輸出が拡大し、経済成長率が高まるとの期待は根強い。金融を緩和すると為替が安くなる理由は、2国間の金利差に基づくものだ。相対的に金利が低い国の通貨の方が為替は安くなる。金利が低い方がその通貨を保有することによって得られるメリットが小さいからだ。また、金融政策がより緩和的な国の方が金利が低下するので、為替は安くなるということになる。もっとも、実際にはそんな単純な話ではない。マイナス金利政策の導入によって日本の金利は低下したが、円安は進まなかった。その理由を考えてみると、次のような円高要因があった。まず、米国の金利も追加の引き締め観測の後退により低下していた。また、原油価格の下落が影響して日本の貿易赤字が縮小し、経常黒字の水準が高まった。さらに、安全通貨として円を購入するというニーズは依然として強かった。このように、金融を緩和したからといって円安が進むとは限らないのだが、仮に円安が進んだとして輸出が増えるのか。その答えは、輸出を金額で見るのか数量で見るのかによって異なってくる。円安になると円建てで見た輸出金額は確実に増加する(図表22左図)。現地通貨で計算した輸出金額が同じであっても、円建てに直せば円安が進行した分だけ膨らんでくる。一方、数量ベースで見た輸出は円安が進んでも増加するとは限らない(図表22右図)。輸出企業が円安の進展を受けて現地での販売価格を引き下げれば、販売数量がある程度増加するだろう。しかし、どの程度増加するかは分からない。価格弾力性の低い商品であれば、多少価格を引き下げても販売数量はほとんど変わらず、販売金額が減ってしまうかもしれない。販売金額が増えるかどうかはっきりしないのであれば、図表22 円安で増える輸出金額、増えない輸出数量注:輸出金額は季節調整値注:輸出数量指数は季節調整値出所:日本銀行資料、財務省「貿易統計」出所:日本銀行資料、内閣府資料

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