政策・経営研究39号最終
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環太平洋パートナーシップ(TPP)協定68季刊 政策・経営研究 2016  vol.3個人、企業、国、あらゆるレベルで競争することを通して成長が実現する。個人レベルでは自己啓発で専門能力を高める競争がある。企業レベルでは、価格競争もあれば、品質の競争もある。研究開発の競争や製造技術の競争もあれば、アフターサービスにおける質の競争もある。国レベルでは、インフラ整備、さまざまな規制・制度、さらには税制といった面での競争がある。インフラや諸制度が経済活動を行いやすいものであれば、世界中から企業や人が集まってくる。規制緩和や制度改革、税制の変更の必要性が経済成長の観点から議論されるのはこのためだ。(2)TPPを日本経済復活ののろしに「競争なくして成長なし」であるが、競争にはルールが必要だ。TPPは、米国、日本を含む12ヵ国でスタートする予定だが、日本を除く参加11ヵ国との貿易額は日本の貿易総額の3割前後に達する。TPPによって共通のルールが整備されることは、日本経済にとっては重要な競争のフィールドが確保できたことを意味する。また、TPPは関税が原則的に撤廃される高いレベルでの貿易自由化を目指すものである。日本の自由化率は、農林水産品の一部で関税が維持されたこともあり、95%と他の参加国より低いが、それでも日本がこれまで締結してきたEPA(経済連携協定)の自由化率を大きく上回るものである。輸入の自由化が進むことによって、これまで守られてきた品目の中には輸入品との競合が厳しくなるものもあるが、原材料や部品をこれまでより安く調達することによって競争力が増す企業も出てくる。一方、輸出の自由化が進むことは、日本からの輸出にとってはプラス材料であり、新たに輸出が可能になる品目も出てくるだろう。海外現地法人で生産を行っているメーカーにとっては、日本から供給している部品にかかる関税がなくなり、負担が軽減されるケースも出てくる。TPPがカバーする分野は財の貿易取引の自由化にとどまらず広範にわたる。サービス貿易、投資、金融サービス、電子商取引、政府調達、知的財産、ビジネス関係者の一時的入国、労働、環境等さまざまな分野で共通のルール作りが進んだ。これは、企業にとっては海外でのビジネス環境の改善につながると同時に、海外でのビジネス参入・拡大のチャンスになる。このように、TPPはさまざまなビジネスチャンスを提供するものだ。個々の企業がこのチャンスを積極的に活かしていくことが、日本経済を覆う閉塞感を打ち破るきっかけになるだろう。もちろんそこで待ち受けている競争は厳しいものであろうが、競い合うことによって得られるものも大きいはずだ。長きにわたって低成長が続いたことで、日本人のマインドが委縮している。ひたすら円安と株高が続くことを念じて、政府・日銀に対してもそれを実現するための対策を期待してきた。その結果が、巨額の財政赤字とマイナス金利であるが、皮肉なことにそれがまた将来に対する不安を拡大させることになる。守りの姿勢に徹することが、将来に向けての投資に対しての慎重な姿勢を助長する。守りに徹しているので、TPPについても負の側面がことさら強調されている。安い輸入品が拡大して国内の競合する産業がダメージを受ける。日本からの輸出にかかわる関税はもともと低いので自由化のメリットは大きくない。米国向けの自動車やトラック等の輸出にかかる関税は長期にわたって維持されるので当面メリットがない。こうした指摘は間違いではないが、TPPのような協定において、ある国に一方的に有利な取り決めなどあり得ない。有利になるものもあれば、不利になるものもある。守りに徹していても道は開けてこない。TPPの意義は、貿易自由化や取引にかかわる広範なルールを決めることによって、競争の環境を整えることである。オリンピックと同様にそこに参加して競い合うことに意義がある。オリンピックでも日本人にとって不利なルールもある。ルールの決定から関与することが重要なのはもちろおわりに~守りに徹しても道は開けない~

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