政策・経営研究39号最終
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地域福祉の担い手の形成条件に関する一考察79は給与を得て働いている職員である」という考え方が強かった、という声があった。現在は地域社会に暮らす組合員とコミュニケーションを図りながら、組合員主導で運営に取り組む南医療生協であるが、当時は組合員をけん引する役は職員であるという考え方があった。こうしたことから、運動の担い手として職員を積極的に増やしてゆく必要性にかられ、結果として人件費が膨らみ、そのことが赤字経営の常態化の一要因となっていた。80年代に入ると、社会保障関係費の抑制策が講じられ、診療報酬についても引き上げを抑制する傾向が強まっていった。さらには90年代のバブル崩壊とその後の経済の低迷は医療保険財政に大きな影響を与え、2002年にはマイナス改定も行われる等、どの病院においても経営のあり方が問われる時代へと突入してゆく。そうした中で、南医療生協はかねてからの累積赤字もあり、さらに苦しい状態が続いていった。2003年5月に開催された第40回総代会では、2002年診療報酬改定により、医療収入が前年比で3億円以上の収入減となったこと、これを受けて南生協病院のみで前年比2億円の減収、法人全体で1億7千万円を超える減収となったことが報告された。こうした状況から理事手当の10%カット、常勤理事の年収5%カット、当時支出全体の54.6%を占めていた人件費の見直しを行う等の経営改革に着手せざるを得なかったという。2)高齢化社会の進展と地域における福祉ニーズの顕在化次に挙げられるのが、高齢化社会の進展と地域における福祉ニーズの顕在化である。大都市名古屋においても高齢化は毎年進展しており、なかでも南区の高齢化率は26.1%と16区内で最も高い(平成25年1月時点)4。名古屋市の人口は平成9年以降一貫して増加傾向にあるが、南区は昭和40年代をピークに一貫して減少している。その一方で世帯数は増加を見せ、1世帯あたりの構成員数は減少が顕著である5。前述したいっぷく運動を通じて、組合員の実感としても高齢単身世帯の増加が認識されており、こうした地域社会の変化の実感によって、組合員は福祉ニーズを実感し、自らの生活圏に必要な福祉サービスをどう作ってゆくか、という点に関心を向けていった。(2)南医療生協の内的な変化1)組合員の量質両面からの変化南医療生協の内的な変化としてまず挙げられるのは、担い手たる組合員の量質両面からの変化である。変化を促してきた要因としては、班単位、支部単位の活動の活発化により地域の担い手が生まれる土壌を耕してきたことと、組織改革と並行しながら地域から生まれた担い手を理事等への要職に積極的に登用してきたことの2つが挙げられる。i)地域の担い手を生む土壌づくり南医療生協にとって活動のもっとも基礎的な単位である班は、2000年代中ごろから飛躍的に増加した。また支部についても増加傾向が見られる。これにともない運営委員数も増加した。2000年に365名だった運営委員は2007年には400名を突破、2015年には611名の運営委員が活動に協力を行っている。また南医療生協では90年代後半からそれまで病院や診療所単位であった支部組織を、居住地域ごとの支部組織へと変更した。これにより、組合員の生活圏により近い形での支部づくりが可能になった。支部分割は班の拡大、機関紙配布協力者の確保、運営委員の担い手の確保が揃わなければ実行できない。つまり、支部を分割するということは、地域の中での担い手を見つけ育てる行為と直結している。さらには2000年以降、福祉施設の誕生に合わせて支部の分割が行われるケースが頻繁に見られる。前述したグループホームと生協のんびり村の2つはその典型例である。そしてこうした動きを後押ししているのが、1支部1福祉運動(いっぷく運動)や1ブロック1介護施設運動(いちぶいっかい運動)である。まずいっぷく運動として、組合員が自らの生活圏である支部単位での福祉運動を気軽に始める。それを契機に

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