政策・経営研究39号最終
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証券化を一歩前から考える85現在の金融手段のなかで証券化は大きな位置を占めるようになっている。また先の金融危機がサブプライム・ローン問題と呼ばれる証券化商品の問題をきっかけに始まったことも記憶に新しい。証券化の金融技術に関する解説は多く出されているが、一方で証券化金融技術の一歩前の部分に注目した議論はあまりないようだ。意外にこの方面からの議論も面白いのではないかと思い議論を展開したいが、その前に本邦で使われる流動化という言葉から証券化が目的とするところを少々考えておきたい。本邦には「資産の流動化に関する法律」があり、その第1条には「この法律は、特定目的会社又は特定目的信託を用いて資産の流動化を行う制度を確立し、---------、資産流動化の一環として発行される各種の証券の購入者の保護を図る----------。」と述べてあり、証券化は資産流動化の一環としての位置付けがなされている。では、流動化とは何であろうか。同法2条2号には「この法律において「資産の流動化」とは、一連の行為として、特定目的会社が資産対応証券の発行若しくは特定借入により得られる金銭をもって、-------」との規定があり、資産に対応した証券発行等によって資産を金銭化することをもって証券化とされている。証券化の英語はsecuritisationである。一方、流動化を英語に直訳すればliquidationの語になるだろうが、この語は英語圏の金融では証券化の意ではなく会社清算の意に使うことが通常かと思う。おそらく、日本において流動化の語が意図するところを英訳すると、monetisation になるかと思う。monetisationは、もともとは貨幣を鋳造する意であったが、金融関連では事業を収益化する意でも使われ、さらにはある事業や資産を金銭化する意で使われている。本邦で流動化という場合、金銭的価値を現時点においてほとんど生みだしておらず、まるで固定化している資産(固定資産ではない。念のため)を証券化という手段によって流動化し、結果として金銭的価値を生み出させるということを意味しているのは、上述の通り資産の流動化に関する法律の規定からも明らかであろう。当事者にとって証券化は流動化させること自体が目的ではなく、そのすぐ先にあると思われる金銭化を目的にしており、資産のなかに眠っているように見える金銭的価値を顕現させることを意味しているのは明らかであろう。流動化(証券化)は使用価値を交換価値に変換する作業といえる。また国土交通省のウエブサイトでは流動化(証券化)の仕組みを、「資産の流動化は、資産を保有する者が、特定の資産保有を目的とする別の主体(特別目的事業体=SPE:Special Purpose Entity)を設立して、そこに当該資産を移転してその資産が生み出す将来のキャッシュ・フロー(これ以降「CF」という)を原資に資金調達を行う手法」1としている。重要な点は流動化(証券化)が資金調達の方法ということである。原権利者は特別目的事業体への売却によって売却資金を得るが、特別目的事業体は購入した資産(を使った事業)の将来のCFを返済原資にして資金調達を行い、原権利者への代金支払の資金とする。この特別目的事業体の資金調達が流動化であり、証券の発行の形態によって資金調達を行えば証券化である。なお、特別目的事業体は原権利者とは異なる法律主体であり、原権利者が特に保証等を行わない限り、特別目的事業体の資金調達の責任を原権利者は負わないことは重要な点である。証券化とは交換価値としての金銭価値を顕現させる(多くの場合には使用価値を交換価値に変換する)ことによって資金調達を達成することを目的とするものであることを押さえておきたい。証券化を簡単に説明すると上述のように、会社や自然人(原権利者)の持っているある資産(原資産)を特別目的事業体/会社(信託等を使い会社を使わない証券化もあるが、以降は特別目的会社の語を代表として使用する)に1導入にかえて。流動化という言葉2統計的手法と証券化。サブプライム・ローンの証券化を例に

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