政策・経営研究39号最終
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シンクタンク・レポート86季刊 政策・経営研究 2016  vol.3譲渡し、この特別目的会社が譲渡を受けた資産のCFに依拠した証券を発行して資金調達を行うことをいう。原権利者は特別目的会社に資産を譲渡(流動)することによって売却代金を受け取り、当該資産を金銭化したことになる。発行した証券の利払いと元本返済は原資産が生み出すCFから充当され、原権利者は基本的に発行された証券の利払いや元本返済の義務を負わない。投資家は原資産が生み出すCFを専ら信頼して証券化商品に投資するわけである。このCFの確実性に関しては、原資産が多くの案件から構成されるプール型のポートフォリオの場合には統計手法によって分析される。この確認手段である統計手法について考えてみたい。まず住宅ローンの証券化を例に考える。住宅は比較的高額であることから、これの購入者が全額自己資金で購入することは難しいことが多く、住宅の購入者が金融機関からの借入を行うことが頻繁に見られる。この住宅ローンの集合体(ポートフォリオ)を特別目的会社が購入して証券化する場合、重要なのはこの住宅ローンのポートフォリオが将来生み出すCFがどの程度確実かということである。ポートフォリオの名目的なCFは個々のローンのCFを加算すれば算出できるが、将来において確実と考えても良い当該ポートフォリオのCFは前提を置いて推測するしかない。証券化において将来のCFの確実性を分析する際に用いられる前提は、統計的分析手法に依拠すれば一定の条件の下ではかなりの確度で将来の確実性を予想できるということである。過去に観測されたCFの確実さと今後観察されるCFの確実さには、一定の条件の下ではそれほど大きな差は発生しない事を前提としている。この前提ではたとえば過去一定年限の債務不履行率や支払遅延率を分析すれば、今後の債務不履行率や支払遅延率は相応に予想できるということなる。過去、太陽は東から昇っておりおそらく今日も太陽は東から昇るであろう。またピサの斜塔から落とす2つの石は過去もそうであったようにおそらく今日も石の重量と関係なく同じように落ちることが観察されるであろう。米国プラグマテイストのパースは「あらゆる探求者が最終的に同意するように運命づけられている見解こそ、われわれがいう真理ということの意味である」2と述べているが、これは科学的真理を含めた真理に対する現代人の典型的な考え方であろう。現代人にとって真理とは事象に関して最も適切と認識される説明のことであろう。たとえば物体の落下速度vはgt(gは重力加速度、tは時間)と表すことが最も適切であり、これが真理と認識される。そして統計的手法は多くの場合、帰納的な検証方法を数学的に補強し社会現象の分析にも強力な武器として利用されている。(ちなみに、落下速度をv=gtと表すことが適切であり真理であっても、そもそもなぜそうなのかとか、重力はなぜ存在するのかというような、状況の記述・説明以上のことを求めることは意味のない問いとして現代では問うことを回避することが通常と考える)住宅を購入した人がそのために借り入れたローンの集合体/ポートフォリオが支払う将来の確実さを過去実績によって推し量るというものは、もちろん統計学的に支持されうるものであるが、その確実さはサイコロを振って1が出る確率は1/6であるということより確実性は低そうである。統計的分析では、証券化の対象とする住宅ローンのポートフォリオには何百、何千の借入人がおり、個人個人の行動を予想することはできないが、全体としての支払いの確実さの統計的結論は当該集団の支払いの確実性の姿を表しており、これは当該集団の内容の入れ替えが多少あっても当該集団の性格に変化がなければ、過去・現在と将来とでは大きく乖離しないとする。この考えは生命保険の保険料の算出にも使われる大数の法則、すなわち人為的な操作を行わない完全確率のもとでは実験数を増やせば事象の発生確率が本来の数字に収斂するとする法則の利用である。サイコロを何度も振ってみると、たとえば1が出る割合は1/6近くに収斂し、1/6が本来の確率の数字であることが確認できるはずである。これは、サイコロがちゃんと作られているこ

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