政策・経営研究39号最終
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シンクタンク・レポート92季刊 政策・経営研究 2016  vol.3設計者と格付会社が個別の格付について議論を行っていたこと、格付会社が証券化商品の設計者が使ったデータをそのまま使っていたことや、信用格付を信用リスク以外にも適用されるがごとくに誤認させたこと等々について指摘されている。これらについては、各国当局からの規制が課されるとともに、過去の問題について罰金が課され、また格付会社自身による行動規範の見直し等が生じている。このように特に金融危機以降、格付会社の問題が各種指摘されているが、一方で投資家による格付の利用は大きく減少しているとは思えない。現在でも為替資金取引を行う相手方の格付が一定以上というような内規を持っている中央銀行が多いし、多くの機関投資家も格付を投資対象選定の際の基準のひとつにしている場合が多い。このため、発行体の側においても社債の発行における格付の取得は重要であり、特に証券化商品において公募される場合に格付の取得がなされていないことは稀である。なぜであろうか。端的にいえば、格付が平明でそのうえ大外れはしないと多くの投資家に依然として思われているからであろう。格付会社は民間企業であり、また格付会社が問題を指摘された際の抗弁として表現の自由を主張していることから、格付の恣意性が明らかになっており、投資家が格付会社の信用格付を全面的に信頼することは考えられない。一方で多くの投資家は、格付を全面的に信頼できないにしても平明で大外れはしないだろうと思っている。その意味で格付は相変わらず大きな影響を持っているといえよう。格付の平明さをいえば格付はAAAやAaa(ムーディズの場合)のような単純な記号で表されており、投資家が投資検討対象数を制限するときに便利である。たとえば証券化商品についての門前払いの条件を格付を使わずに行おうとすると、対象となる証券化の仕組みの例示や、証券化の対象の例示、債務不履行率の例示やこれに対する保全手段の例示等を行う必要があり、極めて煩瑣である。投資家にとって格付の高低によって門前払いを行う規定を作り運用することが簡単であることは格付の利点と認識されよう。また門前払いに使うのであれば、大外れさえしなければ、多少の恣意性や不正確性は問題ないと考えられる。その結果格付が相変わらず影響力を持っているのであろう。われわれは往々にして大きな影響力のあるものを正しい(ことに近い)と判断することが多い。これはひとつの割り切りといえるかもしれない。多くの投資家が格付を利用すれば格付の影響力が増し、その結果人々にとっての格付の外観的信憑性は増すのではないか。このとき証券化商品を売りたいアレンジャーは、皆がある程度信頼して外観的信憑性がある格付を無視することはできないので使わざるを得ず、もしくは積極的に高格付を取得して販売促進につなげようと考えるであろう。このようにして市場において格付があることが当然との状況を継続させている。証券化の利点のひとつは、資金調達でありながらオフバランスシートとなる可能性があることとよくいわれる。そもそもなぜ企業はオフバランスシートを選好するのであろうか。一般的に企業は借入が少ないほど、優良企業とされる傾向がある。たとえば、本邦においてトヨタ自動車やパナソニックが無借金経営を誇ったことがそのよい例であろう。借入が少ないほど優良企業であるとの見方は、借金は悪であり自己資金で事業ができることは素晴らしいとの定見が支えているものと思う。実は資本効率の面からは借入がゼロであることは必ずしも良いわけではないが、この資本効率の議論は本稿の目的ではない。負債の大小が大きく影響するもののひとつは格付会社による信用格付である。上述のように少なくとも投資家がなんらかの意味を見出して格付を使っている現状においては、証券の発行体としては格付に大きな配慮を払わざるを得ない状況であろう。信用格付は各企業の負債返済能力を格付会社が判断し5オフバランスシート

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