政策・経営研究39号最終
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証券化を一歩前から考える93て行うものである。格付会社から投資適格以上の格付を取得していることが投資家にとっての投資検討の要件になっていることが多く、したがって債券の発行体にとっては格付会社から投資適格の格付を取得できるか否かによって、発行する債券の売れ行きに大きな差がでる。投資非適格格付(一般的にBBB-/Baa3未満)の債券に投資する投資家は、少数派と考えられている。最近投資非適格もしくは格付を有しない企業の社債発行が欧米で盛んになっているとの報道があるが、このような報道も社債市場において格付が投資適格か否かについての差が厳然として存在し、投資適格な債券への投資が主流であることの証左である。さもなければ投資非適格債の人気上昇にニュースとしての価値はないことは明白であろう。格付は企業を定量的かつ定性的に分析して決定されるが、定量分析において借入額は大きな部分を占めると考えられている。企業はその財務目標として格付会社による信用格付を投資適格で維持することを掲げることがあるが、このとき借入額が格付に大きく影響することから、たとえばnet debt/ebitda(「純借入」÷「金利・税金・減価償却前利益」)のような指標を一定の数字以内にすることを掲げていることがある4。このように格付が重要であり、この格付の判断には借入額の多寡が大きく影響する場合、企業はなるべく借入を減らそうとするが、それができないときには、会計上対象資産である原資産がオフバランスシートとなる証券化による資金調達を検討候補のひとつとする。証券化が借入と同程度に近い効果と効率性をもち、かつ会計上、原資産がオフバランスとなることによって原権利者が受け取る現金が借入と認識されないのであれば、企業は借入よりも証券化による資金調達を好むことになる(もちろん、証券化によってオフバランスシートを達成するための費用がオフバランスシートの効果よりも大きいときには、企業は証券化を選択しない)。借入を証券化で代行させることができれば、企業が現在の格付を維持する際に許容される借入の額が実質的に増える可能性があり、また証券化によるオフバランスシートの効果によって格付が上がることがあれば、上位格付を得ることによって投資家の信頼が増すとともに、借入可能金額が増加することになる。オフバランスシートは、証券化の対象となる原資産が特別目的会社に売却されることによって実現する。原権利者が受け取るお金は借入金ではなく売買代金であるとの構成をとる。売却によって原資産が特別目的会社に移り、特別目的会社はこの原資産の生むCFを使って利払いと元本償還を行う証券を発行し、この証券の発行代り金が特別目的会社から原権利者への売買代金支払いに充当されるわけである。原資産を特別目的会社に売却することによって原資産の(交換)価値が顕現するわけであるが、売買の定義は一見簡単なようで実はそうでもない。会計・税務・法律において売買と認定される範囲が若干異なることがある。特に証券化ではその仕組み構築のうえで、原権利者と原資産の関係を原資産の引渡し後において遮断することが難しいことにある。証券化が金融上の効率化を追求すれば売買と認定されない場合がある。たとえば証券化の場合には、原権利者は形式上対象資産を売却するが実質的にはそのまま対象資産に対して支配力を維持したい場合が多い。たとえば不動産の証券化の場合、原権利者は対象不動産を活用する事業者となることが多いであろう。投資家の側からいっても、原権利者が対象資産に関与し続ける方が安心できる場合が多い。原権利者が原資産のリスクを取り続ける仕組みであれば、投資家は当該資産に問題があって原権利者が手放すのではないと認識することが多く、この資産を使った証券化商品への投資家にとっての安心度が増すことになる。また原資産のもともとの保有者である原権利者は、証券化の対象となった原資産のことをよく分かっており、そもそも当該資産を保有することによって生じるリスクを取っていたわけである。したがって証券化の仕組みの中で証券化商品の債務不履行率を下げて高格付を取得するために一定限度債務不履行のリスクを取る者が必要な

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