政策・経営研究39号最終
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シンクタンク・レポート94季刊 政策・経営研究 2016  vol.3場合には、原権利者がもっとも容易かつ安価に当該リスクを取ることができる者と考えられる。こうして原権利者が証券化の仕組みのなかに保証人の形で組み込まれることがある。ただこのような場合、売却後も原資産に関するなんらかの利益もしくはリスクが原権利者に残ることになり、このとき当該資産の売買とされる行為は本当に売買であったのかという疑問が発生する。このように売買でありながら金融商品としての合理性も追求するという、二兎を追う形の場合、金融としての経済合理性を追求すればもう一方の性格が否定されることになる場合が多い。二兎を追う形の金融は「何々(たとえば、売買)の形態をとるが実は金融である」との構成を取り、前者による会計処理を行うことによって借入であることを消そうとするものである。別の例をあげると、リース(特にファイナンス・リース)が典型的であり、ここで少々リースの例を検討しておきたい。リースは一見賃貸借契約のように見える。ちなみに日本民法の601条では、「賃貸借とは当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対しての賃料を支払うことによってその効力を生ずる」との規定があるが、日本のリース会社の事業団体であるリース事業協会は、本邦においてリース取引の大部分であるファイナンス・リースに関して、「ファイナンス・リースの法的性質について、基本的な要素は賃貸借的側面にあり、ファイナンス・リース契約は賃貸借を中核とし、金融・サービスの側面をも包括した契約類型である」5と述べ、ファイナンス・リースは単純に賃貸借に収斂するというわけではないとの見解を明らかにしている。ファイナンス・リースの定義について日本では直接的な法律の規定はないので、ここでは、とりあえず会計基準にその定義を求める。日本の会計基準ではファイナンス・リースとは「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除できないリース取引またはこれに準ずるリース取引で、借手が当該契約に基づき使用する物件(以下「リース物件」という)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」6との規定がある。また、同じく会計上ではファイナンス・リースと認定される要件として(1)リース料総合計の現在価値が物件の購入価格の90%以上、もしくは(2)中途解約不能なリース期間が物件の法定耐用年数の75%以上(ただし例外あり)、等々が述べられている7。すなわちファイナンス・リースはリース料で物件購入費用のほとんどを回収する、もしくは、物件の耐用年数のほとんどをリース期間で使い切るようなリースである。この2つの点を展開させると、「ファイナンス・リースにおけるリース料は賃貸借による賃料と異なり、各期における利用の対価ではなく、調達費用等によって計算される金額(総額)であり、各期において支払われるリース料は、この総額を元に計算される」8との結論が導かれるわけである。このファイナンス・リースが本邦でリースと言う場合に指し示されている商行為の大部分である。このファイナンス・リースは賃貸借には単純に収まらず、金融・サービスの側面をもった契約として発展させようとの意志が業界にあり、その一方でリースの基本性格は賃貸借のままとして賃貸借の場合に認められるオフバランスシートや貸手の法律上の優位な地位を維持したいという、矛盾する2つを追求して二兎を追おうとした。すなわちリースは賃貸借を中核としながらも特に金融という側面をもって発展した形態であるが、これはリースが事業として発展を図るにあたって、金融業としての経済合理性を志向したためであろう。ちなみにリースを賃貸借と認定できる場合には、リース物件は貸手の所有物であり、当該物件は貸手のバランスシートに資産計上され、借手はこれを資産計上することはなく、また将来の予定される賃料債務を債務計上する必要もない。借手が必要なのは、毎回のリース料支払いを費用計上するだけであろう。また法律上は会社更正6リースの例

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