政策・経営研究39号最終
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証券化を一歩前から考える95において賃貸料は共益債権とされ、一般債権よりも有利な扱いを受ける。ところで賃貸業であれば、貸手は物件の使用権を借手に移転しているが、賃貸借の開始時、賃貸借の期間中、そして賃貸借の終了時のすべてに所有する物件に関して極めて強い関心と関与を行い、賃貸料はまさに物件利用の対価との認識を持つ。一方リースの貸手は、もちろんリース物件の所有権を有しているが、リース料は専らリース物件の取得に関し貸手が支払った費用を回収するために設定しようとする。そしてこの費用を回収しかつ利益を上げることができるのであれば、当該リース物件の状況にさほど関心を示さないことが経済的に合理的である。これがファイナンス・リースであり、そのときリース料は物件利用の対価から物件に関わるファイナンスの返済に変貌する。このときファイナンス・リースの貸手は法律が前提とする賃貸借の貸手の状況よりは、延払・割賦売買の売り手の状況に近いと言えるであろう。またファイナンス・リースの場合には、リース物件を通常の場合には在庫として持たない。ファイナンス・リースはリース物件の耐用年数に近い比較的長期の期間で設定され中途解約が実質できないことから、転々と賃貸が繰り返されることを想定していないこと、または、リース料の合計金額をもって貸手がリース物件を購入することに要した金額を回収できることを原則として設計されている。このようにファイナンス・リースには通常の賃貸借に比較して経済的効率性を高めるように設計され、物件の陳腐化リスクや借手を次々に見つけることのリスクを負う賃貸借の貸手としての側面は減少している。このようなファイナンス・リースに関して最高裁判例9は、ファイナンス・リース取引で借手が倒産した場合、リース料債務は契約の成立時に全額が確定することから、リース物件の使用とリース料の支払との間に通常の賃貸借における対価関係はないとして、リース料は賃貸借で認められている共益債権ではなく、一般の更正債権になるとして、借手倒産時におけるファイナンス・リースの賃貸借性を認めない判断を下した。このような、ファイナンス・リースの賃貸借の性格を否定する動きは、法的な賃貸借における共益権という優位性をリースから奪う。またこのようなリースのファイナンス化は賃貸借であれば認められる会計上のオフバランスシートの扱いも、ファイナンス・リースにおいては認められない状況を招くことになったわけである。以上リースについて記述したが、金融商品が二兎を追う場合一兎も得られないひとつの例としたい。証券化でもそうであるが商品設計者が金融商品の経済合理性を追求しつつ金融以外の商品性も追及しようとすると、社会一般から見ると一種の逸脱と認定される場合があるということであろう。商品設計者は経済合理性の追求において一種の割り切りを行うが、この割り切りが社会一般の認識と相違している場合がある。サブプライム・ローン問題を契機として、証券化に各種規制をかけるべきであるとの議論がなされている。この議論は、原権利者になんらかのリスクを負わせ続けるべきであるとの議論、格付会社になんらかの規制をかけるべきとの議論、証券化の手数料の問題についての議論等々がある。このなかで、原権利者に一定のリスクを残置させることに関しては、オフバランスシートの実現が困難になる可能性もあり議論が分かれている。証券化は投資家の募集方法が公募でも私募であっても結局は特別目的会社を使って投資家から資金を集めて金融を行う、一種のノンバンク業務を行うわけである。ノンバンク業務は銀行業務類似業務としてなんらかの規制を行うことが経済社会の安定のためには必要なことが多くなっていると考える。かつてのように銀行には重い規制、ノンバンクは規制外という状況は必ずしも社会にとってよいことではないと認識されつつあると考える。証券化は特別目的会社を使うが、この資本は最低限でありまた特別目的会社への保証や優先劣後によるリスク緩和処置も最低限に設定され、経済合理性を徹底的に追7証券化と規制

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