政策・経営研究43号最終
14/75

日本経済の中期展望12季刊 政策・経営研究 2017  vol.3う、遅々とした改善にとどまる。その結果、国と地方の長期債務残高の名目GDP比率は、2020年代後半になってごくわずかに改善するものの、200%以上の高水準が続くことになろう。②金利上昇リスクあり当社の見通しでは、消費税率引き上げ等、財政健全化に向けた取り組みが相応に行われ、国債への信認が大きく損なわれることはないものとして、長期金利は緩やかに上昇することを前提にしている。消費者物価上昇率(消費税の影響を除く)は、2010年代は前半・後半とも0.3%、2020年代は前半が0.4%、後半が0.6%と、ごく緩やかなインフレにとどまると見込んでおり、このため長期金利も2020年代の前半は0.74%。後半は0.96%と、2030年でも1%に満たず、したがって利払い負担の急激な増加は見込んでいない。このように、金利が比較的低位で安定した状況が続くことが望ましいことは言うまでもないであろう。しかしながら、財政健全化の見通しに対して市場が失望し、国債への信認が揺らいだ場合に、金利が上昇する懸念があることは、念頭においておく必要がある。金利が上昇すれば利払い負担は増加し、財政状況はさらに悪化する。加えて、「異次元」といわれるこれまでのきわめて緩和的な金融政策の結果、国債全体の4割以上を日銀が保有しており、今後、ここからの“出口”を模索する過程で金利上昇の可能性もある。要するに、財政基盤が脆弱であることは、金利上昇という大きなリスクを内包している。さらに、将来世代に負担を強いることになるという意味でも、巨額の政府債務は健全な姿とは言い難い。したがって、厳しい現実を直視し、痛みをともなうものであっても、持続的成長の基盤となる抜本的な税と社会保障の改革を、一日も早く進めることが望まれる。以上、2020年代の日本経済について、予測されるひとつの姿を示した。繰り返すが、これは、労働力確保や生産性向上のための幅広い努力、またサービス貿易強化等対外経済活動の高度化、そして消費税引き上げ等財政の健全化を目指す取り組みが、相応になされることを前提にしている。そうしたことが実行されなければ、持続的な成長は実現しない、ということを十分に認識し、官民一体となった取り組みの加速が期待されるところである。おわりに

元のページ 

page 14

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です