政策・経営研究43号最終
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日本の財政の現状と中長期的な課題19年度に増加率が高くなっているが、これは成長戦略としてデジタル経済等「未来への投資」のための政策が実施されたためである。これらを除けば、他の先進国は2012年度以降の増加率は高い年度でも2~3%である。これに対して、近年の日本は、最も低い年度で3%であり、常に補正予算によって歳出が拡大しており、その増加率は他の先進国と比較すると大きいと言える。補正予算において歳出が拡大されても、それに見合うだけの税収が当初予算と比較して増加していれば、基礎的財政収支は悪化しないことになる。国の一般会計における基礎的財政収支対象経費と税収について、決算額の当初予算額からのかい離をみると、すでに述べたように、基礎的財政収支対象経費は、1990年度以降、決算額が当初予算額を上回っている一方、税収は、決算額が当初予算額を上回る年度もあるが、そのような場合、税収の上振れ以上に基礎的財政収支対象経費が拡大していることが多い。このように、日本では、補正予算を通じて歳出を拡大させることで、基礎的財政収支は当初予算と比較すると悪化しやすい傾向にあると言える。(3)日本の租税負担率の低さ日本の歳入の中心となる租税負担、社会保障負担の推移をみると、社会保険料率の引き上げを反映して、社会保障負担のGDP比は上昇が続いている(図表10)。租税負担と社会保障負担の合計である国民負担は歳出の規模が大きいほど、重くなる傾向にあり、日本は、欧州諸国と比較すると、歳出のGDP比が低いことから国民負担のGDP比も低い傾向にある。こうした中、日本は、高齢化が最も進展していることもあり、社会保障負担のGDP比はOECD加盟国の中では比較的高いグループに属する一方、租税負担のGDP比は低いグループに属する(図表11)。EU加盟国はEU指令によって、付加価値税率(標準税率)は15%以上と定められていることもあり、財・サービス税が歳入の中心となっている国が多いが、それと同時に個人所得税のGDP比も比較的高いと言える。日本は、消費税率は8%に引き上げられたものの、財・サービス税のGDP比はEU諸国と比較すると依然として低いうえに、個人所得税のGDP比もEU諸国と比較すると低い。日本が国際的にみて個人所得税のGDP比が低い背景のひとつには、日本では、所得税(国税)について、1980年代、1990年代に最高税率の引き下げや限界税率の適用所得区分の変更等により累進構造が緩和されてきたことがあると考えられる。2015年には、格差是正および所得再分配機能の回復の観点から、課税所得が図表9 補正予算による歳出の増加率出所:萩原真由美「米英独仏の補正予算制度」(国立国会図書館『調査と情報』No904)をもとに筆者作成

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