政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望22季刊 政策・経営研究 2017  vol.3における介護サービス利用者の割合)も2014年度時点の水準で将来にわたって一定であるとする。こうした前提の下、2030年度には医療給付費は37.5兆円、介護給付費は12.1兆円となり、2014年度と比較すると医療給付費は5兆円程度、介護給付費は3.2兆円程度それぞれ増加し、今後の高齢化の進展により、医療・介護給付費の合計で8.2兆円増加することになる(図表14)。この機械的な試算は人口動態が医療・介護給付費に及ぼす影響を示したものであり、政府が目指す医療費の地域格差の縮小を通じて、将来的に医療費の増加の抑制につながる可能性がある。1人あたりの医療費の高い地域では、1人あたりの医療費の低い地域と比べると、医療の効率化や予防対策を行うことによって医療費を抑制できる余地が大きいと考えられるからである。もっとも、医療費の地域格差の縮小等は、自発的な取り組みによるところが大きいため、その効果は不透明であるうえ、効果が現れるとしても時間がかかると考えられる。他方、医療技術の高度化や診療報酬の改定により、1人あたりの医療費が増加し、それにともなって医療給付費も増加する可能性もある。今後も医療技術の高度化等が医療費の増加要因となると予想される中、医療費の地域格差の縮小がどの程度、医療費の伸びを抑制できるかが鍵を握ることになると考えられる。なお、高齢化によって医療や介護の給付費が増加すると同時に、今後、20~64歳人口が減少することにより、給付の財源である保険料収入が減少する可能性がある。給付の試算と同様に、年齢別の1人あたりの保険料を2014年度の水準で固定して、人口動態の変化が保険料収入に及ぼす影響を試算すると、保険料収入総額は、2030年度には2014年度と比べ2.4兆円減少する。2030年度時点で、医療給付費は2014年度と比較すると5兆円程度増加していることから、医療保険収支は2014年度と比較して7.4兆円程度悪化することになる。この試算は、2014年度時点の医療保険制度が将来にわたって維持されると仮定した場合のものであり、今後、保険料率の引き上げや、1人あたり賃金の伸びが高まれば、このような保険料収入の減少を避けることができる。それでも、保険料収入が給付の増加に追いつかない場合には、公費負担が増加し、歳出拡大を通じて財政赤字の増加要因となる。(2)潜在成長率と税収構造の変化①潜在成長率の低下の可能性高齢化の進展は、医療・介護等の社会保障だけでなく、労働供給の減少を通じて、経済成長率にも影響を及ぼす。図表14 医療・介護給付費の機械的な将来試算医療給付費介護給付費出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働省「医療保険に関する基礎資料」、厚生労働省「介護保険事業状況報告」をもとに筆者作成

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