政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望24季刊 政策・経営研究 2017  vol.3費は徐々に増加すると考えられる。特に、長期金利が名目GDP成長率を上回る水準に上昇する場合には利払い負担が重くなり、政府が重視する基礎的財政収支には影響がないものの、財政赤字の拡大につながることになる。国と地方の長期債務残高は増加が続いていることから、利払い費は、以前と比較すると金利が上昇した場合に増加しやすくなっていることに留意が必要である。(1)内閣府の中長期試算内閣府の「中長期の経済財政に関する試算(2017年1月)」によると、消費税率が2019年10月に8%から10%に引き上げられ、日本の現在の潜在成長率並みの成長が続く場合(ベースラインケース)には、基礎的財政収支は2020年度までは改善するものの、それ以降は悪化する見通しとなっている(図表16)。政府が目指す名目GDP3%、実質GDP2%以上という経済成長を実現できた場合(経済再生ケース)は、2025年度には基礎的財政収支は黒字となる。もっとも、今後、高齢化が進展する中、潜在成長率を大きく上回る成長を毎年持続することは困難であり、経済再生ケースが実現するとは考えにくい。なお、この試算には、「経済・財政再生計画」における「歳出改革」による歳出削減の効果は織り込まれていない。医療費の地域格差縮小等の効果が発現すると、赤字が減少する可能性はあるものの、歳出改革は自主的な取り組みに基づくものであり、その効果の規模は不透明といわざるを得ない。こうした取り組みは重要であるものの、現時点では、大きな効果を期待することはできないだろう。内閣府の試算に基づけば、財政健全化に向けては歳出の抑制、歳入の増加が重要になると考えられる。(2)財政健全化に向けた課題日本の潜在成長率を考慮すると、消費税率を10%に引き上げても、財政健全化が困難とみられる中、2020年代には財政を取り巻く環境が厳しさを増してくる。そうした中で、財政健全化の達成は容易ではない。さらに財政健全化の達成時期を先送りすればするほど、ますます難しくなる。したがって、将来的には、消費税率のさらなる引き上げは避けられないとしても、現在の政府の増税に対する姿勢を考慮すると、引き上げまでにはかなり時間がかかる可能性は否定できない。したがって、当面は財政健全化に向けて、いかに歳出4財政健全化に向けた中長期的な課題図表16 国と地方の基礎的財政収支に関する内閣府の試算注:復旧・復興対策の経費及び財源の金額を除いたベース出所:内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2017年1月25日)をもとに筆者作成

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