政策・経営研究43号最終
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日本の財政の現状と中長期的な課題25を抑制することかできるかが重要になると考えられる。特に、日本は補正予算の編成により歳出が拡大して、財政収支が悪化する傾向があるうえに、後年度の歳出が拡大する傾向があることから、まずは安易な財政出動(歳出拡大をともなう補正予算の編成)からの脱却が必要であろう。財政出動は基本的にはリーマン・ショック後のような急激な景気悪化や大規模な自然災害に対応する場合に限り、その際にその必要性や規模等について十分に検討されることが不可欠である。安易な財政出動に依存しないようになると、税収の動向といった不確定要素はあるものの、基礎的財政収支は当初予算で想定した水準に近くなる可能性が高まり、財政健全化に向けた道筋をつけやすくなると考えられる。(3)見直しが必要となる世代間所得移転に基づく所得再分配これまでは現役世代が引退世代を支える世代間の所得移転を基本とし、日本は租税負担が国際的にみて低いということもあり、財源を十分に確保せずに、財政赤字に依存しながら、医療・介護といった現物サービスの提供も含む形での所得再分配を実施してきた。つまり、日本は従来から「バラマキ」を続けてきたわけである。今後、高齢化の進展とともに、社会保障関係費は増加が続くと見込まれ、それにともなって歳出も増加が続くことになる。他方、社会保障制度を支える現役世代は減少が続く。このため、これまでと同様の所得再分配を維持しようとするならば、人口減少・高齢化の進展により潜在成長率の低下が懸念される中、財政赤字にますます依存せざるを得なくなる。社会保険料率の引き上げ等により財源をある程度確保できる可能性はあるが、超高齢社会において、世代間の所得移転を前提とする所得再分配は持続性の観点で限界があると言える。日本老年学会と日本老年医学会のワーキンググループから、65~74歳を准高齢者とし、75歳以上を高齢者とするという考え方が示されているように、今後は高齢者の定義の変更を検討することが必要になるだろう。さらには、社会保障制度における給付・負担についてさまざまな見直しを検討せざるを得なくなると考えられる。2020年代は、高齢化が進展する中、財政、社会保障制度の持続性という観点から、所得再分配のあり方の見直しを迫られることになるだろう。安倍政権は、増税が景気に与える影響を懸念して、消費税率の10%への引き上げをすでに2度延期しており、現在の予定通り2019年10月に引き上げる場合は、当初の予定からは3年遅れることになる。政府は、中長期的な課題である財政健全化への取り組みよりも目先の景気動向を重視して政策を実施する傾向にあるが、それでは政府自身が目標に掲げる財政健全化をいつまでたっても実現できない。今後、財政を取り巻く環境はさらに厳しくなるうえに、財政健全化はその取り組みが遅れれば遅れるほど実現が難しくなる。2020年代は、財政健全化に向けた政府の姿勢が今までに以上に問われることになるだろう。【注】1所得税額を計算する際に用いられる税率のことであり、課税所得水準が高くなるにつれて、高い税率が適用される。2中長期的に実現が可能と考えられる経済成長率のことである。おわりに

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