政策・経営研究43号最終
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フィンテックの現状と展望27近年、“フィンテック”という言葉が流行語のようになり、議論が活発となっている。“フィンテック(FinTech)”とは、Finance(金融)とTechnology(技術)を合わせた造語であり、インターネット・スマートフォンを使った資金決済や、外為・証券取引、資産運用等におけるビッグデータ、人工知能(AI)等、最新技術を駆使した金融サービスを概念的に指す言葉である。フィンテックの定義は曖昧であり、使う人によって異なる。実際、金融機関のシステムは、オンラインシステムと呼ばれていることからも分かるように、1950年代と早くからコンピューターを導入してきたが、その後のIT技術の進展にともない幅広い金融サービスにおいてITを活用した商品・サービスが展開・提供できるようになった。そういう意味では、現代の金融機関はすべてフィンテック企業ともいえる。ただし一般的に“フィンテック”といった場合、金融機関以外の企業、特に新興ベンチャー企業が提供するインターネット・スマートフォンを通じた最先端技術を駆使した金融サービスを指すことが多い。IOSCO(証券監督者国際機構)も2017年2月の発表レポート“Research Report on Financial Technologies(FinTech)”の中で、““Fintech” is used to describe a variety of innovative business model and emerging technologies that have the potential to transform the financial services industry.”と定義している。こうした企業が今まで見たことがない革新的な金融サービスを提供し、生活や社会を大きく変革するのでは、という期待を込めた言葉とも言える。フィンテックについては、技術的な面や消費者にとってのメリットや使い勝手の点から述べられることが多いが、ここではまずフィンテックが流行するきっかけともなった代表的な金融商品である仮想通貨について分析する。次いで、フィンテックを主にビジネスの観点からとらえ評価し、今後を展望したい。(1)活況を呈する仮想通貨市場近年、フィンテックの中でも仮想通貨は活況を呈している。仮想通貨とは、特定の国家による価値の保証のない通貨で、ドルや円、ユーロのような法定通貨とは異なる。仮想通貨は、電子データであるため、インターネット上で取引が行われ、取引所においてドルや円と交換することができる。また、不正防止のために暗号化技術を用いていること、銀行や業界団体、取引所のような特定の組織やその組織が保有する大型の集中型コンピューターで管理するのではなく、ネット上の多数のコンピューターで記録を共有・相互監視することで管理する仕組みであること(これを支える技術がブロックチェーン(後述))等の特徴がある。仮想通貨は、現在、主要なもので約550種類存在し、時価総額は約12兆円、取引額は約5,800億円/日となっている(2017年6月19日現在、CoinCapより)。株式市場(時価総額8,100兆円、取引額34兆円/日(2017年4月、WFE(国際取引所連合)調べ))や為替市場(6.5兆ドル/日(2016年、BIS(国際決済銀行)調べ))と比べれば小さい市場であるが、2015年以降だけで仮想通貨の時価総額が10倍になっており急上昇したことが分かる。数ある仮想通貨の中で最も著名なビットコインは、仮想通貨の時価総額の約4割を占める圧倒的な存在感を有する。マウントゴックス事件1以降、評判を落とし存在感を失っていた仮想通貨、ビットコインであるが、復活してきているのである。また、ビットコインを例にとると、ウォレット数(利用登録者数)は世界中で1,400万人(日本では20万人)に達しており、2015年の400万人から急速に伸びている。一方、ビットコインを利用できる店舗(オンライン店舗含む)は世界中で10万を超えたと見られるが、ネット店舗を除くと9,000程度と見られている。急速に時価総額、取引額が拡大しているのと比べると、利用できる店1仮想通貨はじめに

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