政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望30季刊 政策・経営研究 2017  vol.3用取引や先物取引サービスを提供していることからも仮想通貨の取引目的がうかがえる。現状、仮想通貨は、株や金利、為替と比べても著しく価格変動率が高いため、価格は急騰もすれば同時に急落するリスクも抱えている。仮想通貨の裏付けとなる資産がないため、理論値や適正価格がないことも影響しているであろう。取引所において取引に係る手数料がゼロのところも多いが、こうした通貨は、価格安定性の重要性が高い送金目的には適さない。1ビットコイン(約33万円)以上保有しているウォレット数は約60万と全体の5%に満たない程度であり、10万ビットコイン(約330億円)保有するビットコイン長者は3人とごく少数である。したがって大規模な仮想通貨の移動は現時点では見られない。ただし、送金目的に利用されるケースも一部で考えられる。それは、犯罪性資金の送金(マネーロンダリング)である。そのため、世界各国の金融当局は、仮想通貨がマネーロンダリング利用されないか警戒している。(1)フィンテックの事例仮想通貨の他に、フィンテック企業が提供するサービスとしては、スマートフォンのモバイル決済サービスや、指紋や虹彩等生体認証技術を用いた決済手段サービス、インターネット上でお金の借り手と貸し手を結び個人間での融資を行う仲介サービスであるソーシャル・レンディング(P2Pレンディングとも呼ぶ)、ロボットによる資産運用アドバイス、家計簿管理サービス、クラウド会計サービス等が挙げられる。海外の著名なフィンテック企業やスキームには、オンライン決済サービス会社「PayPal(ペイパル)」や、アップルとグーグルが提供するスマートフォンのモバイル決済サービス「Apple Pay(アップルペイ)」、「Android Pay(アンドロイドペイ)」、中国のモバイル決済サービス「Alipay(アリペイ)」、「WeChat Pay(ウィーチャットペイ)」、米国のソーシャル・レンディング大手のレンディング・クラブ(Lending Club)等が代表例としてあるが、これ以外にもさまざまな企業・サービスがある。(2)金融当局の対応フィンテックに関する当局の動きは早い。日本銀行は、2016年4月にFinTechセンターを日銀内に設置し、フィンテックへの取り組みを強化している。経済産業省も2016年7月に「FinTechの課題と今後の方向性に関する検討会合(FinTech検討会合)」を設置し、フィンテックが経済社会に与えるインパクトや課題、今後の政策の図表4 改正資金決済法(通称:仮想通貨法)の概要出所:金融庁2銀行を巡るフィンテックの動き

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