政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望2季刊 政策・経営研究 2017  vol.3日本経済は足もと、緩やかな回復を続けている。2016年度の実質GDP成長率は1.3%となり、2017年度も1.4%程度の成長が見込まれる。海外景気も総じて堅調であること等から、メインシナリオとしては、東京オリンピックが開催される2020年頃まではこうした緩やかな回復基調が持続するように思われる。しかしその先、オリンピック後を展望すると、人口減少・高齢化が一段と進展する中で、わが国経済はいかにして活力を維持するか、また財政の健全化をはかるか等、重い課題に直面することとなる。当社調査部では本年3月、こうした課題への対応がある程度なされる可能性を織り込みつつ、2030年までの「日本経済の中期見通し」を作成した。この見通しをもとに、2020年代の日本経済を展望してみたい。さて、中長期の予測は言うまでもなく、いくつかの前提を置いたうえで数値を先伸ばしし、将来の姿を示したものである。最初に、当部の中期展望の概要を示すと、まず今回見通しでは主な個別項目の前提(見通し)を以下のように置いた。①経済活動の担い手である労働力は、少子高齢化により減少が避けられない。女性や高齢者の労働参加が現状以上に拡大することを織り込むが、それでも2015年には6,600万人であった労働力人口は、2030年には6,300万人にまで減る。②国内の民間企業設備投資は、実質年2%程度の緩やかな伸びにとどまり、資本ストックは横這いの域を出ない。③ただ、労働生産性(=実質GDP÷総労働時間)は企業の努力や政府による支援により、製造業で年2%前後、非製造業で年1%前後の伸びを続け、経済成長に一定の寄与をする。④海外に目を転じると、主要国でも高齢化が進むこと等から、世界経済の成長ペースは鈍化し、実質成長率は2010年代前半の3.5%から2020年代後半には3.1%に減速する。このことは、わが国の外需を抑える要因となる。⑤財政面では、社会保障支出の拡大に対応するため、消費税率は現在の8%から段階的に引き上げられ、2030年には18%となる。この結果、財政の基礎的収支は緩やかに改善し、2030年度でようやく収支ゼロ程度となる。政府債務残高は2030年でも名目GDP比200%超の高水準が続く。⑥長期金利は緩やかな上昇にとどまり、2020年代後半で1%程度の水準。為替レートも2030年に1ドル103円になるまで、緩やかに円高が進行する。こうした前提のもとで、実質GDP成長率を見通すと、2020年代もプラス成長は維持されるものの、2010年代に年平均1.0%であった成長率は2020年代前半には0.7%、同じく後半には0.5%と、徐々に減速していくものと考えられる。なお、1人あたり実質GDPの成長率でみると、人口減少の影響も相まって、伸び率は2020年代の前半・後半とも1.2%と、1990年代の伸び率を上回る水準の伸びとなる見込みである。以上が中期展望の概観であるが、この成長率の数字だけを見ると、危機感をさほど持たなくても良いように思えるかもしれない。しかし、これは一定の前提を置いたうえでの予測値であり、かつ、さまざまな課題への対応がある程度なされることを織り込んだうえでの数値である。重要なことは、2020年代もプラス成長を維持していくためには、人口減少をはじめとした課題への対応策を、官・民挙げてしっかりと講じていくことが必要ということであり、この点を強調したうえで、個々の課題とそれへの対応について考えてみたい。12020年代の概観 ~プラス成長維持ながら、成長率は1%に満たずはじめに

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