政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望38季刊 政策・経営研究 2017  vol.3日本における足下の労働力不足は極めて深刻な状況にある。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」の企業の雇用人員判断D.I.によれば、大企業、中小企業・小規模事業者(以下、中小企業)ともに、企業が感じる人手不足感は今世紀に入り最も強まっており、人手不足により事業活動に支障をきたす事態に直面している企業もある。昨今の労働力不足は、景気要因もさることながら、人口減少や少子化、団塊の世代の大量定年退職等、構造的な要因によるところが大きいと考えられ、中長期的に継続する課題となることが見込まれている。このような、労働力不足への対応策として、女性や高齢者の活躍推進に向けて政府を挙げた取り組みがなされている一方で、しばしば話題にはのぼるものの、具体的な議論に発展しにくいのが、外国人1の受け入れである。この30年を振り返ると、「第6次雇用対策基本計画」(旧労働省、1988年)以降、日本社会では人口減少や労働力不足への対策として外国人の受け入れが俎上に載せられた際、図表1のようなサイクルが定型的に繰り返されてきた。政府は、専門的・技術的分野の高度外国人材2は積極的に受け入れる半面、いわゆる単純労働者の受け入れは、「国民的コンセンサス」を踏まえながら検討していく、という表現で止まることが多かった。一方で、技能実習生、留学生、日系人等、国際貢献や国際交流等を旗印として受け入れた外国人が、実際には単純労働に近い業務にも従事することで、日本の経済活力の維持に貢献してきたといえる。こうした高度外国人材以外の専門的・技術的分野と評価されてこなかった業務に従事する外国人は、一部の地域に集住する傾向にある(特に日系人)。また、その多くが工場や倉庫内等、対人サービスが不要な業務に従事していることで日本社会全体からは見えにくい存在となりがちなことも影響し(梶田他 2005)、結果的に、高度外国人材以外の外国人も含めた受け入れやその後の社会統合に関する議論には発展せず、立ち消えになってきた。筆者自身は、政府の方針通り、高度外国人材以外の外国人も含め、外国人の受け入れや社会統合に関わる議論の成熟度を高め、国民的コンセンサスを形成するべきという点には異論はないが、具体的に何を議論し、何を合意形成すべきかについては、十分に示されているとは言い難いと考えている。そこで本稿は、外国人の受け入れおよびその後の社会図表1 定型化された日本社会での外国人の受け入れ・社会統合に関する議論サイクル出所:筆者作成1問題の所在と本稿の目的

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