政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望46季刊 政策・経営研究 2017  vol.3考も含め検討が必要だと考える。人口が確実にかつ大幅に減少していくことがみえている中で、新たな外国人を、労働力として正面から受け入れるために、私たちはどのような要件で迎え入れるべきか議論を重ねていかなければならない。(2)社会統合政策について外国人を受け入れた後の対応については、欧米諸国を中心に悪戦苦闘をしてきた歴史がある。上述の実態把握と今後の推定を踏まえれば、すでに日本にも300万人近い外国に由来する人々が暮らし、今後もその数の増加が見込まれているため、本格的に国を挙げて、労働者としてだけではなく生活者としての外国人の視点に立った社会統合政策に取り組む必要がある(本項では、外国人=外国に由来する人々と広くとらえて検討する)。社会統合政策とは、外国人の受け入れ社会への「同化」ではなく、外国人の権利を保障しつつ義務の履行も促進し、また文化的多様性を維持して、同じ地域社会の構成員としての責任も分担することを目指す政策を意味する(井口2015)。21世紀に入り、日本の状況は、外国人の定住・永住化が進む一方で、国として十分な社会統合政策が行われなかった1980年代の欧州諸国の状況に類似しており、このままの状態が続くと、1990年代に欧州諸国が直面したような受け入れ社会と外国人との間での摩擦や軋轢が生じてしまう懸念も指摘されている(井口2011)。こうした指摘や諸外国が直面する課題等を踏まえれば、医療面や災害時の支援体制、外国にルーツを持つ子どもへの教育、文化的・宗教的な相互理解等、多様な角度からの取り組みが求められる。ここでは、特にその中でも、中長期的な観点から社会統合政策として重要と思われる取り組みとして、①基本法の制定、②外国人の社会統合(主に日本語習得)にかかる社会的費用負担への合意、③受け入れ地域の連帯の3点を取り上げたい。①について、諸外国では、出入国管理に関する法律とは別に、外国人の処遇や統合に関する法律や規則が定められているが、日本の現状は法的拘束力のない「多文化共生推進プラン」の作成に止まっている。たとえば、総人口に占める外国人割合が日本と類似している韓国は、在韓外国人の処遇に関する基本法(在韓外国人処遇基本法:2007年)や、国際結婚家庭への支援策の基盤となる法律(多文化家族支援法:2008年)の制定、さらに出入国管理法内でも社会統合に関する条文の追加等(第39条~第41条:2012年)、社会統合政策の展開に向けて法律的根拠を整えてきている。日本では、2016年に外国人に対する不当な差別的言動のない社会の実現を基本理念とした、いわゆるヘイトスピーチ解消法が成立した。これにとどまらず、今後ふえていく外国人対象の諸政策を行うためにも、根拠法となりうる基本法の制定もしくは、入管法のひとつの独立した章として社会統合に関する規定を盛り込むことが必要だと考える。②について、日本で暮らす外国人にとって大きな壁になっているのが日本語習得であるが、現在まで一部の支援機関によるサポートを除き、国として外国人に日本語習得を課すカリキュラム等は存在しない。たとえば、ドイツでは、3ヵ月以上在留する外国人に対して、ドイツ語(600時間)とドイツの法律・歴史・文化等(60時間)を学ぶ「統合講習」(計660時間)の受講を法律で定め、公費(+少額の自己負担)で運用している。その他の諸外国でもホスト国の公用語習得を目的とした国家単位での施策を行う国は少なくない(自治体国際化協会2012)。このことから、日本でも日本語習得を外国人の自己責任とせず、その受講費用を受け入れる側が負担する点について検討の余地があると考える。外国人が日本語を習得することで、外国にルーツをもつ子どもの進学機会拡大、貧困の阻止、治安の維持、日本語による情報収集能力の醸成、地域社会への参画等が期待される。ここでは、日本語ができない外国人を放置してしまうことで結果的に発生してしまう社会的コストを低減するため、国や地域として中長期的視点から一定の公費を投入することに、どれほど合意形成できるかがポイントになる。最後の③について、日本では法務省による(出)入国管

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