政策・経営研究43号最終
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経営視点で取り組む「真の健康経営」に向けて51レポートは各社の主な取り組みや成果をまとめたものであり、本紹介レポートに掲載されていない成果も他にあると想定される。ただし分析条件をそろえるために分析資料は本紹介レポートの記載のみとした。選定企業の取り組み成果を分類したところ、第2回および第3回とも⑤その他成果が最も多く、次は「①生産性向上」であった(図表3)。⑤その他成果とは、従業員の健康維持増進やワークライフバランスに関するものであり、たとえば運動習慣者比率向上や健康診断受診率向上、喫煙率減少、メタボリックシンドローム予備軍数減少、有給休暇取得率向上等が定量成果として紹介されている。健康経営の成果は従業員の健康保持・増進といった産業保健に関する分野、ワークライフバランスを実現する人事分野が中心であると推察される。次の①生産性向上は、病気による欠勤(アブセンティーズム)の減少、睡眠で十分休養がとれている割合向上、業務効率化による労働時間削減等である。成果として生産性向上を紹介する企業数は第2回から第3回に倍増しているが(6社→12社)、昨今の残業時間削減の社会的要請も影響しているとおもわれる。一方、健康経営成果として紹介数が少なかったのが、②医療コスト削減、③モチベーション向上、④企業価値向上である。従業員の健康維持・増進に投資することでむしろ当面は医療費コストがふえる企業(保険者)は少なくない。またモチベーション向上を成果として紹介している企業は従業員満足度調査(ES調査)結果を上げているが、そもそもES調査を実施していない、ES調査を実施していたとしても健康投資によるモチベーション向上を設問に入れてない場合もある。特筆すべきは健康経営とは従業員の健康投資により企業競争力・企業価値向上を実現する経営スタイルとされている一方で、成果として企業価値向上に直結するものを紹介したのは第2回1社のみ(第3回0社)である。第2回で、SCSK株式会社が成果として営業利益向上を紹介している。つまり現時点で健康経営とは、健康維持・増進策充実による従業員の健康度向上と、休業損失減少や労働時間削減による生産性向上が先行しており、健康経営の真の目的である企業競争力・企業価値向上までは至っていないと推測される。もちろん上述レポートに記載されていない他成果も得られているとおもわれる。企業価値向上まで至っていない要因はいくつか考えられる。ひとつ目は期間的な要因である。企業競争力・企業価値向上は従業員が健康になり生産性が高まった次の段階で実現するものである。このため健康経営銘柄のスタートが2015年であることを考慮すると、現在は従業員の健康度向上と生産性向上に取り組む段階であり、まだ数年は必要とおもわれる。2つ目は所管部門の要因である。健康経営の実務は企業競争力・企業価値向上とは関わりが少ない健康保険組合や人事部門等が担っているため、従業員の健康度向上や労働時間削減等産業保健や人事管理に関する成果が優先されやすい。3つ目は外部環境要因である。電通やヤマト運輸の問題もあり、産業界全体に労働時間削減の取り組みが先行している。最後の4つ目は健康経営とは従業員の健康投資によって企業図表3 健康経営銘柄選定企業の取り組み成果(単位は社数)出所:第2回・第3回の選定企業紹介レポートをもとに筆者作成

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