政策・経営研究43号最終
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バスク自治州ビルバオの食文化55創造都市として日本でも有名なビルバオ(Bilbao)は、スペイン王国の北部、バスク自治州に位置している。バスク州政府と州議会は州都ビトリア=ガステイス(Vitoria-Gasteiz)に立地しているが、州内で人口が最も多いのはビルバオで、バスク州を代表する経済都市である。ビルバオは大西洋・ビスカヤ湾に面するという恵まれた地形にあり、欧州主要国へのアクセスも良い。バスク自治州の人口は約300万人で、そのうち約1/3以上はグラン・ビルバオ(ビルバオ市とネルビオン川沿いに隣接する市町村)に集中している。また、1人あたりの名目GDPを州別にみると、バスク自治州は、30,779ユーロ(2015年)となっており、マドリッド州に次いで高い1。なお、「バスク地方」と言う場合、バスク人の歴史的な居住地を指し、その領域はバスク自治州だけではなく、隣接するナバーラ州も歴史的にはバスク地方の一部と見なされている。さらに、バスク人が居住する地域は、国境をはさんで隣接するフランス(フランス・バスク)にも広がっている。さて、バスクは日本人にとってあまり馴染みがない地域であると推測されるが、一方で日本人にとっても著名なバスク出身者もいる。日本人にとって最も名の知られたバスク出身者は、1549年に日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエル(Francisco de Xavier)であろう。ザビエルは、上述したナバーラ州の出身である。ちなみにザビエルという名前は、サッカーの元スペイン代表選手であったシャビエル・アロンソ・オラーノ (Xabier Alonso Olano;通称シャビ・アロンソ)と同じスペルである。同選手はバスク自治州の出身で、銀河系軍団レアル・マドリード等で活躍し、今年(2017年)5月に引退したミッド・フィルダーの選手であるが、現役時代は「バスクの星」と呼ばれていた。音楽家でバスク出身の有名人もいる。ジプシー(ロマ)の民謡の旋律が印象的な『ツィゴイネルワイゼン』が代表作となる作曲家でヴァイオリン奏者のパブロ・デ・サラサーテ(Pablo de Sarasate)は、バスク地方パンプローナ(Pamplona)の生まれである。また、バレエ音楽『ボレロ』の作曲や、『展覧会の絵』のオーケストレーションで知られるフランスの作曲家、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel)はバスク系フランス人である。また、バスク系アルゼンチン人には、2人の有名な政治家がいる。ひとりはアルゼンチンの映画俳優であり、フアン・ペロン(Juan Perón)大統領のファーストレディであり、また政治家でもあるエバ・ペロン(Eva Perón)である。彼女は、アルゼンチン国民からは親しみを込めて「エビータ(Evita)」という通称で呼ばれており、同名のミュージカルや映画は日本でも公開されている。もうひとりのバスク系(およびアイルランド系)のアルゼンチン人は、キューバのゲリラ指導者チェ・ゲバラ(Che Guevara)である。その他、人物ではないが、バスク自治州ビスカヤ県の都市ゲルニカ(Guernica)は、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)による同名の作品が彼の代表作のひとつとなっていることで有名な都市である。ゲルニカは、スペイン内戦の際に史上初の都市無差別爆撃をドイツ軍によって受けた。そして、ピカソがこの悲惨な事実を知り、憤怒をこめて描きあげた作品が『ゲルニカ』である。「文化多様性」という概念は、近年の文化政策において極めて重要な概念となっているが、現在のスペイン社会の文化多様性を理解するうえで、このバスク地方は興味深い題材となっている。そこで、以下において、①言語、②サッカー、③地方自治、の3つの視点から、バスクの文化的特性を概観してみたい。①言語における多様性スペインの公式言語はスペイン語(カスティーリャ語)であるが、自治州(下記③参照)によってはその州の言語が公用語として併用されている。1バスクの概要2文化多様性を象徴するバスクの言語、サッカー、地方自治

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