政策・経営研究43号最終
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バスク自治州ビルバオの食文化57of autonomy)案を作成し、それが国会で採択されることが必要とされる(第146条及び第147条第1項)」(全国知事会2004:57-58)。自治州は、州内に適用される条例を決める権限を有する議会を持ち、その議員は普通選挙で選出されている。自治州政府は行政執行機関であり、州知事は自治州議会で選出されている。各自治州は財政面から見ると独立しているが、中央政府の予算から交付金も受領されている2。17の自治州のうち、バスク、カタルーニャ、ガリシアの3州は、第二共和制期(1931年~39年)に「自治憲章」を住民投票で承認した経験を有している。このため、フランコ独裁を経た1978年の憲法制定後に、住民の自治に対する意思が“歴史的”に確認されているとして、迅速かつ簡便な手続きのみで「自治憲章」を制定し、自治州に移行した。こうした経緯のもと、上記の3州は「歴史的自治州」と呼ばれており、その中でもバスクとカタルーニャの2州はスペインで最も早く(1979年12月18日)、自治州に移行している3。現在の自治州においては、徴税権の拡大等、さらなる権限委譲を求める動きが見られる。バスク自治州においては、2016年11月に、バスク民族党とバスク社会党の連立合意の際にバスクを「ネーション」と認識するという話題が取り上げられた(渡部2017:520)。なお、バスク地方の分離独立を目指す民族組織「バスク祖国と自由(ETA)」は今まで数々のテロ事件を起こしており、スペインおよび国際的な政治問題となってきた。①ビルバオの文化による都市再生前述したとおり、バスク自治州の中心都市であるビルバオ市は人口45万人、周辺の市町村を含めると100万人規模の都市圏を構成している。英国の作家ウィリアム・シェイクスピア作の喜劇『ウィンザーの陽気な女房たち(The Merry Wives of Windsor)』(出版:1602年)の作中では、“Bilboes(ビルボ)”という単語が使われており、「ビルバオの剣」が質の良い金属から強い剣が製造されていることについて言及されている(Bilbao City2015:7)。すなわち、ビルバオはすでに17世紀初頭において「鉄の街」として英国にまでその名を知られていたのである。ビルバオはその後19世紀後半から「製鉄業の町」として盛えていった。また1950~1960年代には造船、石油化学工業等の重工業を中心に発展したが、1970年代以降は日本と同様に重厚長大産業の衰退が著しく、同市の都市活動も停滞していった(経済産業省2004:121-123)。こうした背景のもと、1989年にバスク州とビスカヤ県が共同で策定した「ビルバオ大都市圏活性化戦略プラン」において、ビルバオ市は都市再生を進めるにあたり、8つの主要課題のひとつとして「文化的な中心の創出」を掲げた。そして同プランに基づく都市再生プロジェクトの中でも特に注目されるのは、1997年に建設された「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」(Museo Guggenheim Bilbao)である。②ビルバオ・グッゲンハイム美術館「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」は、アメリカのソロモン・R・グッゲンハイム財団の設立した「グッゲンハイム美術館」(ニューヨーク市)の分館のひとつであり、現代美術を中心とする作品が展示されている。ちなみに、グッゲンハイム財団は当初、上述したピカソ作『ゲルニカ』をマドリード市のプラド美術館からビルバオに移転して展示することを条件に同美術館の建設に同意した、とされる(渡部2004:200)。同美術館の建築設計はアメリカの建築家フランク・ゲーリー(Frank Gehry)によるもので、1997年の開館時には、その特徴的な外観と、バスク自治州政府が負担した約1億3,000万ユーロ4という巨額の建設費用が大きな話題となった。そして、この「グッゲンハイム効果」により、もともとは工業都市であったビルバオに急激に観光客が押し寄せるようになった。そして、2015年には約117万人の入場者数を記録しており、これは世界の美術館の入館者数3創造都市ビルバオ

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