政策・経営研究43号最終
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シンクタンク・レポート60季刊 政策・経営研究 2017  vol.3実際、グッゲンハイム美術館の設立20周年となる今年(2017年)2月、同美術館において、“Creativity in Gastronomy”と題する一連の講演会が開催された。実は同美術館の中には、2013年のミシュランで1つ星を獲得したレストラン「ネルア(nerua)」があり、若手のシェフ、ホセアン・アリハ(Josean Alija)がチーフを務めている。“Creativity in Gastronomy”においては、このアリハ氏と国際的に有名なシェフがともに登壇し、彼らのノウハウを共有し、食文化の創造性の役割について話し合われた7。また、ビルバオ市およびビスカヤ県では、スローフード協会の支部である「スローフードBILBAO-BIZKAIA」と提携して、KM '0'「農家から料理まで0km(KM '0′ From farmer to plate)」というキャッチフレーズの運動を展開している8。スローフードは、各地方における独自の食文化を保存・継承し、地域の生物多様性を保つとともに、食品の均質化と過度なグローバリゼーションに対して別の選択肢を提示する活動である。そして、この“KM '0'”とは、“キロメートル・ゼロ”と読み、日本で言う「地産地消」に近い概念である。レストラン等ができるかぎり最寄りの生産地の食材を利用することにより、消費者は新鮮な食材の料理を味わうことができると同時に、CO2対策にもなる。そのために、生産地と消費地を接近させて、理想的には“キロメートル・ゼロ”にしようという活動である。そして、スローフードBILBAO-BIZKAIAでは、このような哲学を共有するレストランのシェフと生産者をネットワーク化し、一定の基準を満たす“KM0レストラン”の認定を行っている。基準はスローフード協会のスペイン支部が定めており、具体的には下記の6項目となっている9。なお、下記に記述されている「味の箱舟(Ark of Taste)」とは、世界中に存在する地域固有の農水産物や伝統食を守るためのスローフード・インターナショナルの登録制度で、「食の世界遺産」と呼ばれることもある。2017年1月現在、日本でも37品目が登録されている10。・食品を輸送することによって生じるCO2の大気中への排出量を削減すること。 ・食文化の防波堤として保護されている「味の箱舟」に含まれる食材の品質と価値を(消費者に)伝達すること。・地域の旬の食材の消費を促進すること。 ・レストランが提供する料理の成分の40%以上は、100キロ以内の生産者から直接仕入れた地元であること。・料理を構成する残りの60%の成分は、有機認証を取得している「味の箱舟」に登録されている必要があること。 ・料理は、遺伝子組み換え食品やそれを与えられて育った動物を含んではいけないこと。そして、ビルバオ市およびビスカヤ県は、食文化の国際交流にも積極的に取り組んでいる。2017年には、日本においては現時点で唯一の食文化創造都市・鶴岡市(山形県)と「世界料理人交流事業 Bilbao meets Tsuruoka」が実施された。2017年2月に、ビルバオ側から交流事業の誘いがあり、公募によって選ばれた3名の鶴岡の料理人11が、ビルバオに渡航し、調理技術や互いの食文化についての交流研修を行った。この際にビルバ図表5 レストランの入口に掲示されている“KM '0'”のラベル出所:筆者撮影

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