政策・経営研究43号最終
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シンクタンク・レポート70季刊 政策・経営研究 2017  vol.3る体験のクオリティに関わる、最も重要な側面である」(UNWTO2012:6)と高く評価している。日本においても、食をテーマとした観光振興が国および各地域で議論されており、今後のインバウンド観光においても、「フード・ツーリズム」は巨大な可能性を秘めていると推測される。ただし、バスクおよびビルバオの事例研究から浮き彫りとなった通り、単においしい食材や料理が存在するというだけでは、食を通じた地域の活性化には十分ではない。食に携わる地域の人々の営み、すなわち「食文化」が地域のアイデンティティと密接に関連する形で存在し、それが観光客に対して分かりやすく説明・提示されていくことが必須であろう。さらに、料理のレシピをオープンソースとしてシェアしていったことにより、レストラン単体としての評価を高めるのではなく、街全体としての食文化の水準を向上させるという戦略は、オープン・イノベーション戦略の観点からも興味深い成功事例である。このような成功を達成するためには、一見すると遠回りであるかのように思われるかもしれないが、地域の文化資源の再評価を地道に実践していくことが実は王道であると筆者は考えている。そして、それら地域の文化資源と食文化がどのように関連しているのかについて、分かりやすいストーリーを構築して、観光客に情報提供していくことが望まれる。このように、地域アイデンティティと結びついた食文化の振興が、持続可能な地域活性化の大きな鍵となるのではないか。【注】1JETRO Webサイト<https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2017/80488bdef608b6df/MADBCNstyle1-outline.pdf>2スペイン大使館Webサイト<http://www.spainbusiness.jp/icex/cda/controller/pageGen/0,3346,4928839_35729252_35711268_0,00.html>3財団法人自治体国際化協会「スペインの地方自治制度」<http://www.clair.or.jp/j/forum/forum/articles/sp_jimu/126_3/INDEX.HTM>41€=120円で換算すると、約156億円。5ビスカヤ県Web Site<http://www.bizkaia.eus/home2/Temas/DetalleTema.asp?Tem_Codigo=4318&idioma=EU&dpto_biz=2&codpath_biz=2%7C201%7C206%7C4318>6BILBAO BIZKAIA DESIGN COUNCIL<http://www.bidc.eus/projects_cat/city-citizens/>7グッゲンハイム・ビルバオ<https://www.guggenheim-bilbao.eus/en/activities/creativity-in-gastronomy/>図表12 ビルバオの食文化に関する歴史的構造出所:筆者作成

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