政策・経営研究43号最終
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日本経済の中期展望6季刊 政策・経営研究 2017  vol.3を増強する意欲に乏しく、また海外市場に対しても、人件費コストを勘案した最適国での生産拡大や“地産地消”に対応した取り組みが進むため、国内での設備投資の拡大には結びつきにくい。更新投資や省力化投資を中心とした設備投資は相応に実施されるものの、設備投資額が減価償却額を上回って資本ストック額を大きく押し上げるまでには至らず、この傾向は今後も続く可能性が高い。したがって、資本装備の潜在成長率への寄与は2020年代を通じてほぼゼロであると見込まれる。③潜在成長力維持のカギは生産性の向上労働も資本もプラスには寄与しない中、潜在成長力の柱となるのは全要素生産性の伸びである。当社の見通しでは、人手不足を補う生産性の向上をある程度織り込む結果、全要素生産性の伸びが、2020年代前半は1.0%、後半は1.1%となり、これによって労働力減少によるマイナスを補い、トータルの潜在成長率が0.6%程度の水準を維持できるものと見込んでいる。要するに、労働力が限られるなかで日本経済が今後も成長を維持できるかどうかは、この生産性向上に負う部分が大といえる。実質GDPを投入労働時間数(=就業者×一人あたり労働時間)で割った「労働生産性」は、今後も一定レベルの伸びを続けると想定しており、その伸び率は製造業で毎年約2%、非製造業で同約1%と見込む。ただ、生産性向上とひとくちに言っても、その取り組みには以下のようにさまざまな局面があり、すべての対応を重ね合わせて成果を上げてゆくしかないであろう。各局面での具体的対応を以下に例示する。ⅰ)効率化、合理化・省力化投資を行い、機械化によって労働生産性を向上させるとともに、これによって創出された余剰労働力が他の事業活動に従事し、新たな付加価値を生む。・企業内で事業の組み換え(選択と集中)を行い、より高い労働生産性が実現できる事業により多くの労働を投入することで、企業全体の生産性を向上させる。ただし、配置転換のためにはコストをともなう教育・研修も必要になろう。・「働き方改革」によって、個々の労働の質を向上させる。たとえば、メリハリをつけた労働によって、長時間労働を回避しつつ、時間あたりのアウトプットを増加させる、等。ⅱ)高付加価値商品・サービスの導入・「高付加価値商品・サービスの導入」とは、まさに「イノベーション」であり、常に期待は大きいが、容易で図表7 労働生産性の伸び率の予測注1:生産性=生産量÷(労働時間×就業者数)、実質2011年価格注2:後方3年移動平均、注3:予測は当社調査部出所:内閣府「国民経済計算年報」

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