■職住近接型から住環境向上型の住まい方へ昨今の急加速するDXにより、場所や時間にとらわれない多様な働き方が浸透しつつあり、職住近接型の都心での住まい方から、住環境の向上を求めて地方での住まい方へとシフトしている方が徐々に出てきています。■移住者・定住者が増加している地域2020年度住民基本台帳で転入超過人口をみると図1のようになっていることがわかります。東京都に集中していることがわかりますが、一方で(1)自然環境重視型のニセコ町周辺や軽井沢町周辺でも増加しております。この地域ではオンラインで仕事が完結できるデジタルノマドワーカーが多いと考えられますが、自然環境の充実(スキーや避暑地)が大きな要因となっていると推察できます。また (2)自然生活均衡型の仙台市周辺や福岡市周辺でも同様に人口が増加していることがわかりますが、都心よりも住環境にゆとりがあり、地価が安く、さらに公共交通が発達していることが要因になっていると推察できます。■地域価値の再発見と政策このように、地方での住まい方を進めている方は徐々に出てきています。今後、より企業のDXが進み、多様な働き方へとシフトしたとき、どのような人々に魅力と感じてもらっているのか、人々にとって地域価値はどこにあるのか定量的・定性的に評価し、政策を検討していくことが必要と考えます。地方分散型社会と地域価値の再発見国土政策・地域政策・大都市圏戦略■近いうちに昼夜間人口比は意味をなさなくなる国土交通省が2020年11月に調査したテレワーク人口実態調査によると、雇用型テレワーカーは23.0%で過去最高となりました。テレワーカーの満足度は高く、また、20代の学生が働きたいと思う会社に「リモートワークが可能な会社」が第1位となった民間調査結果もある状況を考えると、テレワーク拡大はコロナ禍による一過性のものではなく、今後も拡大し続けると思われます。テレワークは会社や自宅等、仕事の状況に応じて適宜働く場を選ぶため、従業地という概念がなくなります。そのため、都市の拠点性を表す昼夜間人口比は実態とかけ離れ、意味をなさなくなるのは時間の問題です。■テレワーク定着により行政政策も変化が求められるテレワークが進むことにより昼夜間人口比が100を下回る自治体では、実際の昼間人口が増加します。こうした自治体では、消防団や防犯パトロール等、まちづくりの担い手不足が解消される可能性がでてくるため、テレワーカーの巻き込み方策の検討が必要となります。一方、在宅勤務できるようになっても、子育てとの両立が劇的に改善する訳ではないため、保育認定に必要な就労条件が適切であるかを検討する必要性もでてきます。このように行政には、暮らし方や働き方の変化を踏まえた政策の見直しが求められます。■今後大きく変化する社会を見据えた 政策立案能力が必要とされるテレワークはコロナ禍で変化したニューノーマルの一つにすぎません。最も大きく変化したのは、暮らし方や働き方に対する人々の価値観と考えます。更にDXや脱炭素等、社会を劇的に変える政策テーマが増えており、従来とは異なる視点からの検討が求められます。いま行政には、中長期的な視点から社会の変化をとらえた新しい政策ニーズ(チャンス)をイメージできる能力が期待されています。昼夜間人口比が死語になる総合計画、広域行政・地域自治、地方創生92021-22 SEARCH図1 : 転入超過人口総数と20代女性人口研究員松本 義正都市情報・都市解析計量経済分析都市シミュレーショングループ長/主任研究員佐々木 雅一都市力・地域力地方創生・人口問題戦略企画・事業化
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