■都市開発事業や公共事業における資金調達手法住民ニーズや都市間競争力強化のためには、社会資本整備等を進めていく必要がある一方で、地方公共団体の財政事情は厳しい状況にあります。地方公共団体の資金調達手法として公債がありますが、公債は資金使途が限定されず、元利償還が保証されることから、市場規律が働くことなく、収益性とは無関係に事業が実施されるとの指摘があります。また、事業の開発効果や成果が事業に還元されない場合も多く、事業の改善や監視、サービス水準の向上などのインセンティブが働きにいく側面を有します。今後、社会資本の高齢化への対応等を背景としてさらに財政事情が厳しくなるなか、良質な都市環境を整備・維持するには、上記の諸点に対して、資金調達の多様化を図っていくことが重要となります。■持続可能な資金調達手法都市開発事業においては、従来からTIFやBIDの導入の必要性や重要性が指摘されています。近年は、ICO(Initial Coin Oering)、STO(Security Token Oering)といった仮想通貨による資金調達手法に注目が集まっています。これらの手法は、事業による開発利益や収益が事業実施のインセンティブとなるほか、民間投資誘発のレバレッジ効果が期待されます。また、投資家等による評価を通じた財政規律の導入、透明性やアカウンタビリティの確保が図られ、事業の持続可能性が高まります。弊社は、金融系総合シンクタンクの知見やネットワークを活用した資金調達手法によって都市経営を支援します。持続可能な都市経営に向けた資金調達手法行財政運営、外郭団体改革等■SDGsからESG投資※へ新型コロナの影響から2020年は世界的に「サステナビリティ」が強く意識された一年であり、SDGsも踏まえた各種活動への資金的な裏付けであるESG投資に注目が広く集まりました。日本でも「脱炭素」をキーワードに環境分野でのESG投資が進展し、中長期的な投資活動が活発化しています。しかし、自治体ではSDGsへの理解こそ進むものの、ESG投資と明示的に紐づいた形で事業が実施されるケースはまだ多くありません。また、自治体が所掌する事業の本懐である「ソーシャル」(社会分野)については、評価・選定基準が社会的に確立しているとは言い難いこともあり、ESGの文脈で取り上げられることが必ずしも一般的ではない状況です。■「ソーシャルボンド」の浸透と自治体事業このような情勢下、ESG投資のうち社会分野への資金調達を図る「ソーシャルボンド」(債券)については、①東京都における第三者機関評価の取得(国内自治体で初の取得)、②金融庁による指針案(2021年8月施行予定)が今年6月に実務指針として世界で初めて公表されたばかりであり、社会分野での事業・資金需要に対する債券発行の機運が今後広がっていくことが想定されます。ESG投資で重要な観点として、調達した資金が確実に事業へ投下され、事業による定量的な効果を把握できることが挙げられます。この点、上記①では通常の地方債では充足できない投資家の判断基準をクリアすることが意図されており、ソーシャルボンドを通じ従来手法に無い目線が自治体事業にも取り入れられ、資金管理と効果測定が厳格化すると考えられます。■投資家・民間の目線へ対応していくためにソーシャルボンドは資金調達手法の1つに過ぎませんが、財政状況が更に厳しさを増す中、地方財政での資金調達の幅は広がり始めているといえます。一方で、ESGの潮流に沿わない事業では投資家・民間が関心を示さない時代に入ったともいえ、自治体もその対象に含まれることを念頭に置く必要があります。弊社経験を踏まえ、最新潮流と事業特性に応じた資金調達に配慮し、持続的な財政運営にも資する取組みを支援して参ります。地方財政はESG投資と無縁でいられるか行財政運営、外郭団体改革等132021-22 SEARCH主任研究員岩田 雄三PFI/PPP(官民協働事業)都市開発外郭団体改革(民営化、経営改革)副主任研究員安田 篤史PFI/PPP(官民協働事業)集客施設開発広域行政内容固定資産税等の税収増を担保とする債券を発行して、都市整備の開発利益(地価上昇)を基盤整備費等に還元する区域内の不動産所有者から負担金として一定額を徴収し、負担金を直接区域の事業や活動資金に充当するブロックチェーン上で独自にコインやトークン(証票)を発行し、投資家等から仮想通貨を得るICOが資産等の裏付けがないのに対して、有価証券(株式、不動産等)を裏付けとしてトークンを発行する導入状況税制改正が必要大阪版BID等自治体での導入検討自治体での導入検討分類債 権負担金仮想通貨仮想通貨手法TIFBIDICOSTO※ESG投資:単純な財務情報に限らず、環境(Environment)・社会(Social)・ ガバナンス(Governance)要素を考慮した投資を行うこと。
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