■地域公共交通活性化再生法の改正による 「共同経営」昨年度改正された地域公共交通活性化再生法の目玉の一つが、地域内の複数バス会社による「共同経営」です。独禁法特例により、過度に競合する路線の効率化や利益配分等が可能になりました。先日、共同経営に向けた準備室を設置したバス会社の人にお話を聞く機会がありました。どうやらその地域では、バス会社の社長同士が定期的に会う機会があるらしく、その中で共同経営の話が出てきたそうです。地域の人口減少を理解し、民主導で「競争から協調への転換」を進めていて、私は素晴らしいと感じました。■「あのような畏まった会議で、本音を話せるわけない」次に、これらバス会社と地元行政との関係を知りたいと思い、活性化再生法の「法定協議会」とバス会社の関係を尋ねました。すると「あのような畏まった会議で本音を話せるわけない」と意外な答えが返ってきました。わが国の公共交通政策の特徴は交通事業者による「独立採算」であり、競争がサービスを高めるとされてきました。しかしながら、人口減少でパイ自体が小さくなる中では「競争より協調」が重要です。この地域は民主導で協調が進みましたが、一般論として、民主導で民間同士の協調が進むのでしょうか。「協調」こそ行政の役割ではないでしょうか。それ以前のそもそも論として、行政と民間バス会社の「協調」はできているのでしょうか。■コロナ禍やMaaSを契機として 「協調」を始めてみませんかコロナ禍でバス会社が困窮する中で、赤字路線の見直しを関係者が協調して進めていく必要があります。また、MaaSの本質も協調であり、事業者の垣根を超えた組織・仕組みづくりが求められます。このように、コロナ禍とMaaSは協調に向けた大きな転換点です。関係者で「腹を割って」話を始め、人口減少時代に適した組織・仕組みづくりを目指してみませんか。腹を割った話し合いで、公共交通を競争から協調へ交通政策■多様性をまちづくりに活かす動き昨年9月に14年ぶりに総務省の「地域における多文化共生推進プラン」が改訂されました。SDGsの基本理念でもある多様性と包摂性のある社会の実現を目指すとともに、新たに、外国人住民との連携・協働による地域の活性化やグローバル化への対応が謳われています。多様性について、包摂だけでなく、まちの活力とすることが具体的に描かれました。欧米では2008年から、欧州評議会が多様性を好機ととらえ政策を推進するインターカルチャラル・シティプログラムが行われており、自治体ネットワークとして加盟する都市が、現在世界147都市に広がっています。日本では浜松市が2017年にアジア最初の加盟都市として参加しています。■多様性がどのように地域に寄与しているか 「見える化」する多様性をまちづくりに活かすためには、まず、事例や活躍の内容を見える化することが重要と考えます。例えば、カナダでは、外国人住民の活躍を紹介する#ImmigrationMattersキャンペーンを実施しています。様々な背景をもった人がどのように活躍し、地域のコミュニティや経済活動に寄与しているのか、個々の事例とともに、統計等も含め見える化し、事実に基づく国民の認識を促進しています。■多様な人が企画・運営等にも参画すること多様性を好機とした事業等を推進していくには、その企画や運営等を多様な人に任せることも重要です。最近では、自治体の事業等において、事業の当事者となるマイノリティへの意見聴取は進んできているものの、肝心な企画や運営等には関わらない形で行われることで、当事者に対する細々とした気配りやキーワード等が抜け落ち、活用・参加してみようと思えるような内容にならない、情報が伝わらないこと等がみられます。多様な人とともに企画・運営等を行うのは手間がかかることではありますが、多くの人が社会参画し、まちの活力を生み出すための近道です。多様性をまちづくりに活かすために都市計画・施設計画、まちづくり152021-22 SEARCH主任研究員近藤 洋平地域交通政策都市・地域計画地域の国際化主任研究員南田 あゆみまちづくり・ひとづくり地域の国際化産業振興・流通(食・農)
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