■広がる賑わい空間づくり街中の広場や公園、街路といった空間に対し、様々な主体が賑わいづくりに関わる事例が増えています。代表的なものでは、東京の丸の内仲通りや大阪城公園などがあり、名古屋でも久屋大通公園の北エリアが民間事業者によってリニューアルされ話題となりました。東京の丸の内仲通りでは地域のエリアマネジメント団体によるまちづくりが行われており、その中で一時的に車道を開放し作り出したスペースにキッチンカーや椅子、テーブルなどを設置し、人々の滞留空間を提供するほか、折々に路上イベントが開催され、非日常の賑わいも生まれています。大阪城公園ではもともと行政が管理していた公園にパークマネジメント制度が導入され、民間の事業者が公園の管理だけでなく、新たな魅力ある施設の整備や、既存の未利用施設の活用も行っています。これらの事例では、地域や賑わいづくりの知見を活かした、従来の維持管理にとどまらない取組が行われています。■より魅力ある街中空間に向けて国土交通省が新たに道路の修復・改変や道沿いの民有地のオープンスペース化による官民一体の公共空間の創出や、歩道空間の拡張、道路上の占有物の条件緩和等に対する支援事業を始めました。これによって、道路に新たなオープンスペースを作り、また、生まれた空間にカフェやベンチ等を設置することで、街路空間を歩行者にとって魅力ある交流・滞在空間とすることが容易になりました。これまでの道路においては人々を滞留させず円滑に移動させることが良しとされる面もあり、街中で人々が交流・滞在する場所はほとんどありませんでした。今後、全国の街中の街路空間がアップデートされることで、街中のオープンスペースの新たな使い方が生まれることが期待されます。それにより、多様な人々を惹きつけ賑わいを生み出す、これまでにない新しい魅力を持った場所が増えていくことが望まれます。街中の賑わいを推進する試み都市計画・施設計画、まちづくり■利用者数減少傾向にある観光案内所リニア中央新幹線の開業を間近に控え、中部地域を中心にリニア関連施策が推進されています。昨年度、弊社ではリニア中央新幹線開業に向けた名古屋市内の観光案内所のあり方について、市内外の観光関係者へのヒアリングや、先進事例調査等を実施して検討しました。名古屋市が運用する観光案内所は名古屋駅、金山駅、オアシス21の3カ所です。全国の観光案内所と同様に、利用者数は減少傾向にあります。その要因の一つとして、インターネットの普及により誰でもいつでも簡単に情報を得られるようになったことが挙げられます。■観光案内所に求められる機能観光関係者へのヒアリング調査から、情報社会における観光案内所には、インターネットにはない情報の提供と従来の観光案内以外のサービスの充実が期待されるとの声がありました。どれだけインターネットで情報を得られても、「地元の人ならではのお勧め」や「五感に訴えかける生の情報」等の対面でのコミュニケーションだからこそ得られる安心安全で信頼できる情報は求められ続けています。さらに、情報を得るだけではなく他の目的も同時に達成できるよう、「お土産やグッズの開発・販売」「独自イベントの企画・開催」「来訪者や地元の人が交流できるカフェ空間の提供」等、付加価値を生む場とすることが、これからの観光案内所には期待されます。■多角的な視点からの検討新型コロナウイルス感染症の拡大が落ち着けば、新たな日常のなかで交流人口も回復してくると考えられます。各地域の玄関口となる観光案内所とするため、多様化するニーズに応え、多角的な視点を取り入れる必要があります。地域特性を活かした、その地域ならではの観光案内所のあり方について地域の関係者とともに考えていきます。情報社会における観光案内所の意義都市計画・施設計画、まちづくり172021-22 SEARCH研究員山田 怜奈PFI/PPP(官民協働事業)都市・地域計画水環境研究員吉田 夏稀まちづくり都市・地域・建築計画地域防災
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