2020-2021SEARCH
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AI、IoTといった技術の進展や新型コロナによるビジネス環境の変化などを背景に、地域産業の競争力強化に向けて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取組が求められています。90年代から進められてきたIT化は、アナログで取り組まれてきた作業やツールを、デジタルに転換することで、業務効率化やコスト削減を主眼としていますが、DXは、デジタルを活用してビジネスモデルや事業組織の変革を図っていくことを主眼としています。近年、国内外問わず、企業を取り巻くビジネス環境の不確実性が高まっています。特に新型コロナは、テレワークをはじめた変化への短期間での対応を、多くの企業に求める結果となりました。そのような急激な変化に迅速かつ適切に対応していくためには、デジタルの活用は必須であり、DXを推進していくことが重要であるといえます。DXの推進にあたっては、データ収集をおこなうIoT機器などの導入とともに、収集したデータを加工・分析し、自社のビジネスの変革へつなげていくことができる推進役となる人材が重要になります。中部経済産業局では、製造業におけるDXの推進役となる「ITものづくりブリッジ人材」の育成に資するカリキュラムを策定・公表しています※。このようなカリキュラムを活用し、IoT機器の設備投資と、DXの推進役となる人材育成を両輪で支援していくことが、地域産業のDXを促進する上で重要といえます地域産業のDX推進に向けて産業振興、技術戦略・評価■自治体のイノベーション政策の変化イノベーション政策は従来企業の技術革新を生み出すことが主眼でしたが、近年は社会課題の解決を図る手段としてイノベーションが期待され、技術に限らず幅広く経済社会の革新を生み出す政策として実施されるようになっています。とりわけ外部の知恵や資源を活用するオープンイノベーションが注目されており、新たな価値創造を目指す手段として活用されています。自治体が取り組むオープンイノベーションは、地域の中小企業とスタートアップの共創を生み出すマッチング事業、スタートアップのインキュベーションを図るプログラム、エコシステムの拠点づくりなど様々な取り組みがあり、全国の自治体で実施されています。■イノベーション2.0産業界、スタートアップ、自治体、市民等が参加、協力するイノベーション2.0型の取組が増加しています。その事例として神戸市の「STOP COVID-19×Technology」があります。このプログラムは新型コロナウイルス発生が引き起こす市民生活及び市役所内の業務における新たな課題の解決を目指し、全国のスタートアップから技術やアイデアの提案を募集するものです。採択されたスタートアップは新たなサービスの市民によるテスト利用や市役所業務の中での試行導入など、実証実験に取り組んでおり、実証に成功すれば広く他地域にも展開することが期待されます。■地域課題の解決を図る手段としての オープンイノベーションこうした自治体が主導するオープンイノベーションの取組は、産業政策の範囲に留まらず、地域社会の問題解決をも同時に図るものです。オープンイノベーション政策はユニコーン企業※の創出を目指すことが唯一の目標ではありません。大都市に限らず、多くの自治体では固有の地域課題を抱えています。自治体が地域の問題解決を図ることを目的として、オープンイノベーションの仕組みを活用して取り組むことが期待されます。自治体のイノベーション政策産業振興、技術戦略・評価Foresight [ 視 点 ]18主任研究員河合 修治都市及び地方計画産業振興・新産業戦略主任研究員長尾 尚訓産業政策技術戦略事業戦略※中部経済産業局「ITものづくりブリッジ人材」サイト https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/bridge_zinzai/※ユニコーン企業:評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業デジタル導入の企画・設計・改善提案部門間連携・調整SIer・ベンダーとの渉外設備投資の提案/決定生産工程・業務工程の把握・理解デジタルスキル・リテラシーのアップデート実務・現場 × デジタル自動化・省力化生産性向上・価値創出[ DXの推進役となる人材のイメージ ]

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