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■モノから人へ~薬中心から患者中心に~今、薬局や薬剤師が大きく変わろうとしています。厚生労働省は2015年に「患者のための薬局ビジョン」を策定し、患者本位のかかりつけ薬局への再編に取り組んでいます。かかりつけ薬局として、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間対応・在宅対応、医療機関等との連携を必須とし、さらに健康サポート機能、高度薬学管理機能の充実が期待されています。例えば、改正医薬品医療機器等法により、2020年9月より、患者の薬の服用についてフォローアップをして、医師へフィードバックをすることが、業務として明示されました。薬を渡す時だけでなく、服薬期間中に、薬の服用状況、効き具合・副作用などを丁寧に把握しながら、薬学的な評価を行い、医師の適切な処方につなげていくことを意図しています。■「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ薬局は、法制度や診療報酬改定を通して、「医療機関の門前」から「地域」への転換を求められており、どのようにして、薬局の内外で地域住民の健康と療養を支え、地域と共に歩もうかと思案しているところと思います。かかりつけ薬局は、元気な頃からその人を知っていて、医療機関や介護施設と比べて身近で、気軽に相談しやすい雰囲気があります。また、業務において、患者の住まいに訪問して薬剤管理指導(医療保険・介護保険)することはかなり一般的になってきています。薬局・薬剤師は、市町村の高齢者福祉や介護保険の職員と少し離れた存在で、地域包括ケアを支える一員として連携している市町村は、まだ少ないと思います。地域包括ケアを支える人材不足が明らかになる中、人材の宝庫が身近にあるのではないでしょうか。地域包括ケアシステムの深化に向けて「薬剤師」が頼りになる文化、教育、福祉■科学的介護の本格始動2021年介護報酬改定の目玉の1つとして、「科学的介護」の推進が示されました。これに伴い、エビデンスに基づいた介護の提供に向け、ケアやリハビリに関連するデータの収集・フィードバックを行う「科学的介護情報システム(LIFE)」の運用が始まっています。今回新設された科学的介護推進体制加算では、LIFEの活用が要件となっていることから、介護サービス事業者の関心や今後の業務に与える影響は非常に大きいものとなっています。■科学的介護 = ケアの一律化ではない科学的介護をめぐってはしばしば、「介護は個別性が高く標準化は難しい」という意見を耳にしますが、本取組の趣旨はケアを一律化することではなく、根拠に基づいた「理由を説明できるケア」を提供することです。そうした視点で考えると、LIFEで示される数値化されたデータだけでなく、ケアの大前提となる本人の価値観や望む生活といった情報も立派な「根拠」と言えるのではないでしょうか。特に介護においては、医療等よりもそのウェイトが大きいため、同じケアをしてもその効果は人によって異なります。こうした個別性に寄り添えることが介護という仕事の魅力であるとも言えます。重要なことは、本人が望む生活を実現するために、科学的介護(LIFE)という武器をどう活用するかという視点であると考えます。■効果的な推進に向けてLIFEの運用はまだ始まったばかりなため、データが蓄積されるにつれて今後の介護がどう変わるのか注視していく必要があります。ただし、科学的介護の実現には人材や設備等が不可欠であり、理念だけがひとり歩きしないよう注意が必要です。自治体においては、データの蓄積やフィードバックの精度を見定めながら、ケアの在り方や地域課題の分析、LIFE活用事例の横展開など、今後様々な取組を検討していく必要があると考えます。科学的介護によりケアの質は向上するか文化、教育、福祉Foresight [ 視 点 ]20主任研究員岩室 秀典高齢者福祉子育て支援・教育文化芸術研究員伊與田 航高齢者福祉障害者福祉ヘルスケア・健康づくり

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