■無くならないビジネスでの“リアル”コロナでビジネス交流のあり方が大きく変わりました。オンライン化が進み、テレワークが浸透、内部だけでなく対外的な打合せもオンラインで行われることが日常化しています。そのような中でも、今後、ビジネスでの重要な局面での“リアルで会う”ニーズは一定規模存在するとみられています。例えば、オンライン化が難しいものとして、客先との信頼性を確認するための商談や契約、技術研修、製品や製造工程を確認するための現場視察、また偶然の出会いからネットワークづくりができる学会もそのひとつです。このようなビジネスでの来訪者を観光客にしていくという視点に着目したいと考えます。■新たな属性の来客の取り込みが必須の観光地言わずもがな、コロナ禍で観光地が疲弊しています。インバウンドの回復にも時間を要し、団体客を大規模に取り込む旅行スタイルも見通しにくい状況です。また“小規模で近場へ”のマイクロツーリズムが定着しつつあるものの、これだけでは十分とはいえません。そのため、新たな属性を取り込むことが必須となっている中で、ビジネス客を「観光客化」することで、その地域での観光消費額を高めていくとともに、従来から課題となっている平日と休日の繁閑の差も平準化できると考えます。■“ブレジャー促進”の視点国が“新たな旅のスタイル”のひとつとして、ブレジャーを推進しています。「出張帰りに遊ぶなんて」と憚られる人も多いでしょうが、国が推奨しているならば、と今後様相が変わってくる可能性があります。ビジネスで訪れた人が真っ直ぐ帰るのではなく、その地域の観光スポット等に立ち寄ってもらえるチャンスは、企業が多い街では少なくないと思われます。そのため、企業と地域とが日常的に連携体制を取り、企業からの地域への人の誘導を円滑にできるようにしておくことが重要となります。情報発信とともに快適な環境整備、満足してもらえるコンテンツの充実等、魅力的なサービスを提供できるような体制を整えておくことが今後必要となります。※ブレジャー:ビジネスとレジャーを掛け合わせた造語で、ビジネス出張等の前後に休暇 をあて、レジャーを楽しむこと。観光復活の鍵となるビジネス客の観光客化~ブレジャー※の拡大~観光振興、集客交流■新型コロナ流行による観光・レジャー行動の変化新型コロナ流行により、人々の生活スタイルが大きく変化し、観光・レジャーの行動・スタイルにも変化が生じました。具体的には、団体旅行の減少や、開放的で密を避けられるイメージのある屋外志向、移動自粛により近場で観光・レジャーを楽しむようになったことなどが挙げられます。また、安心・安全に楽しめることが行き先を決める上での前提条件となり、安心・安全な場所であることを認知してもらうことも重要となっています。地域からの情報発信の他、SNSなどでの口コミによる利用者の生の情報も行き先選択の上での後押しとなっています。■これからの観光地域づくりに向けた視点コロナ禍でこれまでのように観光客数を確保ができなかったことで、改めて観光地域づくりでは観光客数の確保を最終目的とするのではなく、観光というツールを使って地元産業にお金を落としてもらうこと、すなわち観光消費額の重要性が再認識されたと感じます。例えば、オンラインツアーを開催して地元の魅力をPRし、地元産品を販売する等、地元に来てもらわなくともお金を落としてもらう取組も各地で見られました。これまでも、観光消費額の重要性は謳われてきましたが、新たな価値を付けることで高単価を目指すことや観光をフックとした地域消費の創出がより一層求められています。体験型観光を取り入れることで客単価を上げ、滞在時間を延ばすこともその一つとして考えられます。さらに、新型コロナ流行による旅行スタイルの変化の他にも、昨今では、環境配慮をはじめとする持続可能性に対する意識の高まりや人々の働き方の変化(兼業・副業解禁等)など、社会や人々の生活を取り巻く環境は刻々と変化しています。ワクチン接種が進めばまた新たな段階に入る見込みですが、こうした変化を踏まえた観光地域づくりの取組・方針点検をお手伝いさせていただければと思います。改めて問われる観光地域づくりの目的観光振興、集客交流212021-22 SEARCHグループ長/主任研究員内田 克哉観光地域づくりMICE戦略地域振興研究員加藤 千晶集客交流・観光振興農山村地域づくり
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