2020-2021SEARCH
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■“感幸”が観光振興の終着点 観光を“感幸”に置き替えてみませんか?私の造語ではありませんが、よくこの言葉を地域の方に投げかけています。「持続可能な観光地の確立」や「観光による地方創生」を大名目に掲げる地域も多いですが、いずれも終着点は観光による“感幸”ではないでしょうか。その地を訪れる人が幸せを感じ、受け入れる地域側の人々も幸せを感じる。それぞれの幸せの基準や価値観は異なりますが、双方が観光を通じて幸せに感じることが観光施策においてとても大事なことと思っています。■観光客、地域双方の“感幸”とはでは、観光客、地域双方の“感幸”とは何なのか。観光客に幸せを感じてもらうためには、地域資源の磨き上げと様々な仕掛け、サービス、おもてなしなどによる「感動体験」をいかに共有できるかでしょう。ニーズにも確実に応えなければなりません。単にニーズに迎合することではなく、ニーズが求めている「感動体験」は一体何かを探し、見つけ、深堀りすることでしょう。そして、地域側において重要なのは、地域内観光消費をいかに循環させるかです。他地域からの観光客のみならず、地元住民の観光消費を促進することが、観光関連産業における仕入れや雇用や再消費の地元循環を生み出し、地域の幸せに繋がります。■ウィズコロナ時代の観光の行方ウィズコロナ時代の観光振興で重要なことは、マーケットを見誤らないことです。マイクロツーリズムが脚光を浴び、地元観光資源が見直され、足もとマーケットの重要性が高まっています。例えば、現状ではニーズの乏しいワ―ケーションを推進するより、遠方へのお出かけを控える地元住民が地元で異日常・異空間を体験できるステイケーションを推進し、双方の“感幸”の実現を目指すべきでしょう。だからといってインバウンドは後回しでよいわけではありません。東アジア諸国の日本への関心の高さからも、インバウンドは必ず戻ってきます。来るべきインバウンド新時代に今こそ備えるべきでしょう。その時は、海外からの来訪者にも感動体験を与え、“感幸”を共有したいものです。観光が地域にもたらす“感幸”観光振興、集客交流■将来価値を「言語化し共有」することの重要性産業振興や中小企業支援を地域において進める手法には様々なものがあります。それぞれに特長があり適切な選択が必要です。重要なことは、支援される企業と支援側が企業(事業)の将来像やその実現に必要な行動を共有できることです。そして、共有のために言語化(見える化)できることです。支援にあたり採用する手法もこれらに注目するべきと考えます。■地域を支える産業の将来を「デザイン」する「デザイン経営」が注目され、様々な取組が進められています。経済産業省(中部経済産業局)や愛知県、名古屋市では中小企業を対象に実践の支援を進めています。ここで言う『デザイン』とは「目に見える色形などの意匠」ではなく、「設計すること」をさします。デザイン経営は、将来価値を「見える化」し「共有」するために有用な手法であり、業種・業界・規模を問わず採用できます。事業の継続や新規創出のための方針や具体的な打ち手について、外部の支援者(デザインプロデューサー等の専門家)を交えつつ検討することを重視している点も注目点です。■「設計する」という発想をもって支援に取り組む企業が事業を進めるうえで、将来像(ビジョン)を描き、現状を分析し、取り組むべきこと(ミッション)を整理することは不可欠です。その際、将来においてどのような価値をつくり発信しているのかを「設計(デザイン)する意識」が重要です。中小企業を支援する地域の皆様(自治体や支援機関)においても、この意識を高めていただくことが重要と考えます。当社では産業振興におけるデザイン経営の採用について知見の蓄積を図ってきました(別表参照)。これらの知見は一見地味な内容に見えるかもしれませんが、地域における将来価値創出のアプローチの1つになると考えます。将来価値をデザイン(設計)する~支援側に求められること~知的財産政策Foresight [ 視 点 ]22上席主任研究員田中 三文観光による地域の幸せづくり主任研究員萩原 達雄知的財産戦略(知財経営、知財活用、知財金融等)中堅・中小企業支援DX・ICT利活用成功体験は結果が伴って初めて共有できるもの。過程を共有する成長体験から取り組む。デザイン経営では迅速な行動から反省点・改善点を得て次につなげることができる。顧客(総体)ではなく個客(個体)まで絞り込む。個客に提供したい・伝えたい価値を明らかにする。デザイン経営では、時に効率を優先させる判断も必要ととらえる。価値形成(ブランディング)は中長期の取組となる。関係者における方針等の共有ツールとしてデザイン経営を採用する。関係者の意識付けや諸活動の継続性が期待できる。①成功体験より成長体験②顧客ではなく個客③価値形成活動の基盤[ デザイン経営による将来価値づくり 支援上のヒント(一例) ]

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