2020-2021SEARCH
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72021-22 SEARCH■拡がる官民連携事業と推進上の課題官と民とのパートナーシップ(Public Private Partnership:PPP。官民連携)の必要性が言われるようになって久しく、PFI、コンセッション、デザインビルド(DB)方式、リース方式、指定管理者制度、公的財産の有効活用、包括連携協定、実証実験等これらに当てはまらないものも含め様々な枠組みで官と民が連携した公共事業・サービス等が行われるようになりました。そして、具体的な成果が積み重ねられ、その効果を実感する機会も増え、社会的な認知度も着実に高まっているといえます。また、こうした官民連携の拡がりは、事業機会が創出されるだけではなく、これまで公共事業等に縁のなかった企業・団体の参画にも繋がっています。今後更に厳しい財政状況が見込まれる国又は地域において、社会・経済の変化を取り入れた質の高い公共サービス等を提供し、様々な政策実現をするためには、官民連携は引き続き有効な手段の1つであると考えます。ただ一方で、先述のとおり認知度や実施件数は増えているものの、官民連携事業に取り組む上では、主に次のような課題があると言われています。《官民連携事業に取り組む上での課題》○官民連携の導入メリットに関する理解が十分されていない○専門知識・ノウハウを有する人材がいない(又は不足している)○官と民との接点がない(民間が有するノウハウ・アイデアが不明等)○関係者(対象となる各業種)をつなぐネットワークがない■官民連携事業推進のために求められる人材とは上記課題に共通することとしては、官民連携事業に係るノウハウを有している人材や対象事業・サービスに対して理解している人材が、官民ともに地域において少ないという点があげられます。そのため、これまでは、外部人材の登用や大手企業が中心的な役割を担ってきたケースが多くありました。しかし、今後官民連携事業の推進・定着を更に図るためには、各地域において官民連携に係る知識・ノウハウ等を有した人材の配置が不可欠であり、そうした人材の育成が求められています。官民連携事業は、多種多様な分野を取り扱い、かつ従来の発想にない枠組みで事業等を行うなど、幅広い知見と豊富な経験が必要となります。そのため、いずれの人材についても「官民連携事業への正しい理解」があることを前提とした上で、民間側は「公共事業・サービスに係る特徴への理解(できることできないことに対する理解)する能力」「提案力」「企業間の連携力(ネットワーク)」、公共側は「案件の目利きの能力(案件形成力)」「民間事業に対する理解(民間事業の特性把握)の能力」を有する人材が必要となります。■地域プラットフォームの活用等についてこれら能力を有した人材育成は一朝一夕にできるものではありませんが、育成方法の1つとして、地域プラットフォームを活用することが有効です。地域プラットフォームとは、地域の企業、金融機関、地方自治体等が集まり、官民連携事業のノウハウ習得と案件形成能力の向上を図り、具体の案件形成を目指した取組みをいい、国では、積極的な設置が推奨されています。既に全国では複数の地域でプラットフォームが形成されており、官民連携の普及啓発や人材育成、情報発信等の機能を有し、地方創生の枠組みである地域の「産・官・金・学」の連携組織として、地域の活性化の一助になる機能として期待されています。また、各業種をつなぐハブ的な役割やネットワーク構築のための機能としても活用可能です。加えて公共側の知識・ノウハウ定着のためには、官民連携に係る各種ノウハウを組織的に蓄積し、事業推進する体制(PPP専任組織)を自らの組織(自治体等)内に設置する方法も有効です。対象となる事業等が少なく自治体単独でそうした機能を有する組織の設置が難しい場合は、地域プラットフォームにその機能を設けるなど、周辺自治体と連携しながら体制を整えることが有効です。■官民連携の更なる推進・定着にむけて「官民連携」は、あくまでも手段です。その手段を有効に活用するためには、地域の産業、企業及び資産をよく理解し、それらをいかに活かしながら、最適な枠組みを構築できるかが重要であり、決して他事例のコピー&ペーストで期待する効果は最大化されません。つまり、地域毎にそうした仕組みを作れる人材が必要であるといえ、その人材を育成・定着させることが官民連携の更なる推進につながるとともに、地域の財産にもなり得ることから、人材育成は非常に重要なミッションであるといえます。その際、育成した人材を活かすための受け皿を準備することもノウハウ定着のためには重要です。弊社は、公共事業・サービスに民間のノウハウ等を活用して、地域にとってより良い社会を形成するための官と民との橋渡し役・つなぎ役を永年担ってまいりました。今後更に、官民連携が日常的に行われる社会の実現を目指して、人材育成をはじめとした官民連携に係る各種支援等、これからも真剣かつ誠実に取り組みます。上席主任研究員太田 勝久研究開発部長官民連携事業の更なる推進・定着には地域での人材育成が必要

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