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費用便益分析によるインフラが便益を与える役割費用便益分析で判断する必要はない判断インフラとして働きかける役割時間的変化8Ukon Takashi速いMiyashita Mitsuhiro経済効果分析社会資本政策公共事業評価遅い経済効果分析国土政策・地域政策広域交通政策図:インフラの時間軸での役割・種別と方向性図出典:土木学会『Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー〜人々のWell-beingと持続可能な社会に向けて〜』(2022年6月6日発表)視 点我が国は自然災害の脅威に晒され、都市と地方の経済格差が拡大しています。また、近年では未曾有な社会変革(脱炭素化、Society5.0、コロナ後の社会、国際情勢の緊迫化など)へ対応が要請されています。■ありたい未来像の実現にむけた土木からの提言大きな危機に立ち向かい、土木が社会の礎を築くために何ができるのか、という着想のもと、種々の制約を受けた縮小を前提にした未来予測ではなく、ありたい未来の姿「持続可能な社会を実現し誰もが安心して快適に暮らし続けられるWell-Being社会」の実現に向けた提言(土木のビッグピクチャー:長期的全体俯瞰図)が2022年6月に土木学会から発表されました。■共生によるWell-Beingの向上・転換すべき価値観この提言は、個人の幸せの追求のみだけでなく、共生(協働・共創・共感)の理念を重視し、快適に暮らす状態や個性ある地域を創る条件が提示されています。さらに特筆すべきは「過度な効率性新型コロナウイルス感染症拡大以前の交流は「対面」が主流でした。コロナ禍の今、私はデジタル技術を活用することにより、在宅勤務やオンライン会議等の「オンライン」交流の有用性を実感しています。過去のデータをみると「対面」交流とGDPに相関関係がありました。コロナ禍において「対面」交流減少とともに国内経済は停滞しましたが、「対面」交流減少以上の低下はなく、国内経済は「オンライン」交流によって補われたともいえそうです。■「対面」交流の活発化によるイノベーション創出を 目指すべき将来的には「オンライン」の技術はさらに進展し、経済活動のみならず様々な生活の場面で「オンライン」交流は多くなっていくと予想されます。一方で、「対面」交流は「オンライン」交流に比べ移動時間や交通費の移動コストがかかることから、人口減少と相まって国内の「対面」交流は少なくなる方向にシフトしてしまうでしょう。その延長上には国内の交通サービスの水準低下重視から脱却し、共同体を重視した価値観へ転換する」必要性が謳われている点です。■国民の基本的権利を保障するインフラの役割新たな価値観のもと、インフラには社会的効率性を目指す役割と、平等性・公平性を目指す役割があると整理され、後者は「費用便益分析で判断する必要はない」との記述があります。地域のインフラ整備の議論において、国民の基本的な権利を保障するための必要性を真■に議論できる場面が早急に到来することを切に願っています。から国内経済のさらなる低迷を引き起こす最悪のシナリオも想定されます。このような状況にならないためにも、私は「オンライン」交流による生産性向上に加え、「対面」交流の活発化による国内至る所で「イノベーション」が生まれる社会を目指すべきと考えます。■スピード感をもった交通インフラ整備を「対面」交流には、直接会うことによる信頼、安心、好奇心、創造など、人々が活動していく中で重要な要素が含まれています。私はこれら要素を含む「オンライン」で代替できない「対面」交流こそが人々が我が国の持続的発展を遂げる上で重要なカギであると考えます。人口減少が顕著になる前に、前提として各地域において人々が出会える場の整備やイノベーションを創出しようとする人々のマインドの醸成による潜在需要を顕在化させる取組が重要と考えます。同時に、「対面」交流を安全かつ確実に支える交通インフラはハード整備に時間を要するため、スピード感をもって進めていくことが特に重要と考えます。国民の安全・環境・経済・生活国土空間上での展開民間投資社会的効率性を目指すもの平等性・公平性を目指すもの(国民の基本的権利を保障)インフラ社会基盤・下部構造制度(政治・経済・社会)文化・伝統自然環境グループ長/主任研究員右近 崇主任研究員宮下 光宏社会資本政策インフラを取り巻く新たな提言(土木学会:Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー)■共有すべき日本の危機社会資本政策イノベーションを生む「対面」交流を増やそう■コロナ禍にみる「オンライン」交流の力

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