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9Kondo YoheiMizutani Yosuke2022-23 SEARCH地域交通政策都市・地域計画地域の国際化国土政策・地域政策広域交通政策自治体DX地域公共交通の主要な利用者は「高校生」「高齢者」「観光客」と言われます。この中で高齢者や観光客は、基礎自治体としての福祉政策や観光政策との連動が見られますが、東海地域の高等学校の多くが県立であるため、高校生については基礎自治体の政策の中でやや見落とされがちな印象があります。例えば夕方の地方駅では、次の電車・バスや家族の送迎が来るまでの数十分間、高校生が何十人も駅の外でただ時間潰しをしている光景をよく見かけます。高校生活はその人の人生に大きな影響を与えます。待ち時間を時間潰しではなく、充実した時間に変えることはできないものでしょうか。■高校生の自習や自主活動の場(高山市「村半」)昨年度、高山市の「村半」という伝統的な町家を改修した施設を見学しました。利用は無料のため、夕方になると多くの高校生が集まり、自習や自主活動(YouTube撮影も!)が行われています。こうした待ち時間の充実により、公共交通の不十分さを逆手にとれる可能性もあると思いました。デジタル社会形成基本法の重点計画に掲げられたデジタル田園都市国家構想の基本方針が2022年6月に閣議決定されました。同構想では「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すとし、デジタルの力を活用した地方の社会課題解決の重要な要素として、①地方に仕事をつくる、②人の流れをつくる、③結婚・出産・子育ての希望をかなえる、④魅力的な地域をつくるおよび⑤地域の特色を活かした分野横断的な支援の5つが掲げられています。地方自治体におけるデジタル化・業務改革の大きな契機となることが期待されます。5つの課題解決を図る上での要素のうち、「②人の流れをつくる」では「転職なき移住」を推進するとして全国へのサテライトオフィスの設置を目指すと具体的な方向性が記載されています。都市部からの移住促進のため、地方部にはオフィス環境だけではなく、都市部にアクセスできるための交通インフラの整備も期待したいところです。こうした発想は、公共交通を見るだけでは出て来ないと思いました。高校生の一日に着目し、一人ひとりのQOLをどう高めるかという発想が重要になります。「村半」では改修に当たり、長い時間をかけて地域の多様な意見を取り入れたそうです。地域の伝統建築に触れることで、卒業しても郷土を思い出してほしいという願いも込めたとのことです。高校生は地域の将来を支える人材です。高校生活が充実すればその地域への愛着にもつながり、卒業後の定着やUターンにもつながる可能性があります。すなわち高校生の支援は、将来の地域社会への「投資」と言えます。やや見落とされがちな「高校生」について、地域への「投資」の視点から政策を考えてみてはいかがでしょうか。大きな構想が推進される中で、自治体システムのガバメントクラウドへの移行や業務標準化など、自治体業務のデジタルへの移行が急速に進められおり、大きな変革期を迎えています。また、この流れに合わせてデジタルツールを活用した内部業務の効率化や市民サービスの向上のためのDX化に取り組む自治体も出てきています。デジタルツールの導入の前段として、既存業務の棚卸し(手順、手間の洗い出し)をして整理することで、他の自治体との作業手順の比較も可能となるため、より効率的な手順への見直しも期待できます。そして、業務にデジタルツールを活用することで処理の履歴がデータとして蓄積されていくため、そのデータを活用した改善(DX)が今後期待されるところです。こういった自治体のDX業務に関して、民間のDX業務に取り組む弊社のコンサルティング事業本部などとも協働しながら解決策を検討して参ります。主任研究員近藤 洋平主任研究員水谷 洋輔交通政策高校生への支援は「投資」である■基礎自治体が見落としがちな「高校生世代」自治体DXデジタル田園都市国家構想と自治体のDX■デジタル活用で期待される都市と地方の格差是正■地域の「投資」としての高校生支援■デジタル化で進む自治体業務の“標準化”

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