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Yasuda AtsushiKato Chiaki2022-23 SEARCHPFI/PPP(官民協働事業)集客施設開発インフラ投融資観光地域づくり集客・交流我が国では1980年代における国有企業の民営化を皮切りに、財政負担の軽減や事業改善のため、公共部門での民間活用が進み、採算性の確保を前提に、様々な民間活用の手法が導入・活用されてきました。近年では、成果内容に応じて支払水準が変動する成果連動型民間委託契約方式(PFS)やソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という新たな事業手法が広がり始めています。民間が関わる以上、採算性の確保を意識することは不可欠ですが、このような手法の広がりは、採算だけでなく成果の質も追求することが重要視されるようになったといえます。■PPP/PFIで採られている評価プロセスの実情公共部門における民間活用の一手法として位置づけられる「PPP/PFI」については、これまで多くの実績が積み上がり、PPP/PFIにおいても成果をチェックするプロセスは多くの事業で取り入れられています。しかしながら、実務的な評価のしやすさや予算制約等より、新型コロナ流行による観光施設の営業範囲の縮小や人々の移動自粛、団体旅行の減少等は、依然として集客に悪影響を及ぼしています。観光庁「旅行・観光消費動向調査」によると、21年の日本人国内旅行消費額、日本人国内延べ旅行者数はともに、20年から微減(それぞれ20年比-7.9%、-8.6%)しています。新型コロナ流行前の19年比ではいずれの数値も半数以上減少しており、新型コロナ流行前の水準への回復には今しばらく時間を要すると見込まれます。■観光地域づくりに対する再認識これまでのように観光客数を確保できない状況下で観光業の回復が目指される中、観光地域づくりでは、観光客数の確保を最終目的とするのではなく、観光を通して地元産業にお金を落としてもらうこと、すなわち観光消費額を確保することの重要性が再認識されたと感じます。PPP/PFIにおいては質が良いこと(=アウトカムやインパクトの発現)を高く評価するよりも、条件に合ったアウトプットでなければマイナス評価を付け、支払金額を下げるという発想に立つことが多くなっています。この意味で、これまでのPPP/PFIの多くはアウトプット志向型であったと考えられます。■アウトカム志向型PPP/PFIに向けてこうした成果の質を積極的に評価するためには、評価手法や測定コスト、予算措置等、いくつかの検討課題があり、実例に基づく取組みも途上段階にあります。一方で、昨今のSDGs・ESGの潮流から、公共側だけでなく、民間側も自らの事業で同様の課題に直面しており、特にアウトカムの発現に対する社会的な感度は従来よりも高まることが予期されます。今後のPPP/PFIでも、アウトカム志向型事業の進展に備えることが必要となります。そのためには、募集条件やモニタリング手法等の工夫・見直しにより、新しい事業構造や公民間のパートナーシップのあり方を模索していくことが重要と考えます。人々の観光行動の変化が見られています。近場への旅行の増加や、旅行やアウトドアレジャーへの関心の高まりなどです。また、昨今では“サステナブル”や“ウェルビーイング”といった新たなキーワードも観光の要素として注目されています。変化の激しい状況に対応しながら観光地としてのイメージを高めるためには、地域の各主体が補完し合いながら取り組みを進めることが重要です。具体的な地域としての取り組みとしては、既存の観光資源の見せ方・売り方を変えていくことや、消費喚起策の検討、ファン作りによるリピーター確保等が挙げられます。新型コロナ流行の先行きは不透明ではありますが、感染症対策を意識した観光行動の浸透や、各所での感染症対策の徹底にも後押しされ、徐々に観光再開の気配もあります。インバウンドの受入再開も期待されます。今こそ地域としてどのようなターゲットに、どのような資源を訴求していくのか、観光戦略の再考と新たな観光客の受け入れに向けた準備が求められていると考えます。19副主任研究員安田 篤史副主任研究員加藤 千晶公共経営アウトカム志向型PPP/PFIの時代へ■公共部門での民間活用における採算性と成果の質観光振興観光戦略の再点検を■依然として新型コロナが観光業へ影響■変化を捉えた観光戦略づくりを

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