託児所・保育施設充実は少子化対策の決め手か?

2011/02/24 美濃地 研一
子ども

日本は少子高齢化社会を迎え、さまざまなシステムが転換を迫られていると感じている場面は多いだろう。特に、社会保障システムが抱える問題は深刻である。現行の年金制度は、子ども世代から親世代への「仕送り」に依存する部分大きく、現在のように少子化が進展している状況を考えると、これから高齢者となっていく私自身を含め、「年金は大丈夫か」と心配になるのは当然と言える。もちろん、子どもを持つ親という立場でいえば、親世代よりも大きな負担を課されることが確実な子ども世代に対して、申し訳ないという気持ちもある。
ところで、経済的な活力の維持、年齢別人口構成のアンバランスの解消、社会保障システムの安定など、多くの側面から少子化対策を進めることは、国民だけではなく、政府にとっても大きな課題となっており、内閣府に大臣(現在は、経済財政政策や男女共同参画とともに、与謝野大臣が少子化対策を担当)が置かれ、子ども・子育て支援策(※)に取り組んでいる。

しかしながら、実際に小中学生の子どもを持つ親として、実施されている少子化対策と現実に必要とされる対策には、ギャップがあるように感じている。例えば、多くの政党・首長のマニフェストや政策ブレーンが提唱する「託児所・保育施設の充実」。かつての「待機児童ゼロ作戦」で注目を浴びたように、現時点でもなかなか解決できない、大きな問題である。私自身の経験に照らし合わせてみても、託児所・保育施設の不足が共働き断念の一つであったことは間違いない。子どもの絶対数が減り続ける中で、10年近く前から政策課題として注視されながら、現在も解決していないという意味で、早急に解決すべきことであろう。

ところが、子どもが成長するにつれて、「託児所・保育施設の充実」だけでは、少子化は解決しないということも身にしみてわかってきた。子どもが小学生となっても、共働きの場合、「どうやって対応すればよいのか」という難題が続く。地域や学校の運営方法によって程度の違いはあると思うが、小学校の家庭訪問、授業参観、先生や父兄の懇談会、校区内見回り、PTAの役員・・・こういった一連の行事や会合のほとんどが、平日の日中に設定されており、(親が平日にフルタイムで働いている場合に)出席しようとすれば、会社を休む・半休を取るといったことでなければ対応できない。核家族化が進展する中で、親以外でだれかに頼むということも難しい家庭が多いのではないか。もちろん、平日ではなく、土日に行事を設定し、平日に働いている人でも対応しやすい工夫をしているところもあるし、「(仕事を優先し、学校行事には)出なければ良い」という考えもあるが、校区内の見回りやPTAの役員は、相互扶助という性質上、自らの都合だけで避けて通れないものである。

中でも、PTAの活動は、役員にずいぶんと大きな負担がかかるシステムとなっている。実際に、PTAの役員の「なり手」が少ない中で、最後は公平性を重んじて「くじ引き」となる。その結果が明らかとなった瞬間は、自分が役員になった場合も、ならない場合も、なんともやりきれない気持ちとなる。「事業仕分け」ではないが、(働いている、働いていないにかかわらず)役員に多くの負担を強いるPTAの活動の見直しが必要なのではないか。少なくとも、学校や自治体の教育委員会に、このような問題意識から「改革すべきである」、「事業仕分けしよう」という意思は感じ取れない。残念ながら、子ども・子育て支援策を訴える政府・政治家からもそのような話は聞いたことがない。

このように、少子化対策が求められる中で、「託児所・保育施設の充実」に加え、その先にも解決すべき課題があることは確かである。生産年齢人口が減少し、(就労率が低い女性の)就労人口を増やし、経済活力を維持しようという政策の方向が示される一方で、現在の子育てを取り巻く環境が、働いている人にとって足かせになっていることも認識する必要がある。「託児所・保育施設の充実」だけではなく、その先にある課題にも目を向けた対策をぜひ検討してもらいたい。

(※)「子ども・子育て白書」に現状と課題、国の施策が整理されている。

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