人口減少社会における社会保障制度~痛みを世代間で分かち合う~

2014/03/19 中田 一良
調査レポート

○日本では、平均寿命の上昇などを背景に人口の高齢化が進んでいる。高齢化の進展に伴い、社会保障給付費は増加が続いており、GDP比も上昇傾向にある。社会保障給付費の財源は、保険料収入や公的負担などであるが、保険料収入が伸び悩むなか、公的負担が拡大傾向にある。

○日本の社会保障制度は、現役世代が保険料や税を拠出し、それをもとに高齢世代に給付を行うといった世代間の所得再分配が基本となっている。高齢者の世帯あたりの受給額は1990年代までは増加が続き、2000年代に入ってからは横ばいで推移しているが、高齢者の世帯数が増加していることから高齢世帯の受給総額は拡大傾向にある。他方、現役世代の拠出総額は頭打ちとなっており、世代間の所得再分配には限界がみられる。

○65歳以上人口は2042年まで増加すると見込まれ、今後も社会保障給付費は増加が続くと考えられる。また、1人当たりでみた医療や介護の給付額は増加傾向にあり、医療については相対的に医療費の高い高齢者が増加していることも増加要因の一つとなっている。今後も1人当たりの医療や介護の給付額の増加が続くと、社会保障給付費はいっそう拡大することになる。

○予想を上回る高齢化が進展するなか、政府はこれまで年金支給総額の増加を抑制するため支給開始年齢の引き上げなどの対応策をとってきた。また、2004年には人口構造の変化を年金給付額に反映させるマクロ経済スライドの導入を決定した。もっとも、デフレが続いたこともあって、これまではマクロ経済スライドによる調整は実施されておらず、その効果を発揮するに至っていない。

○今後、現役世代の人口減少が本格化し、これまでと同じ枠組みに基づく社会保障制度を維持し続けることには限界がある。そうしたなか、年金制度を維持していくためには、人口構造の変化を年金給付額に確実に反映させることが必要であり、マクロ経済スライドにおける名目下限を撤廃すべきである。また、今後は支給開始年齢の更なる引き上げも課題となる。前者は高齢世代、後者は現役世代にとって痛みを伴うものであるが、年金制度の維持のためにそれぞれが痛みを分かち合うことが必要である。

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