債務リストラへの機運が高まるギリシャ経済~ゼロ成長下での構造調整に限界~

2017/11/09 土田 陽介
調査レポート
海外マクロ経済

○ギリシャ景気は2013年に入り下げ止まったが、その後はゼロ成長が常態化している。輸出を中心に持ち直しの動きは見られるが、その輸出の景気けん引力がそもそも乏しいため、外需の好調が内需に反映されない状態が続いている。他方で、最悪期は27%を超えていた失業率が足元20%近くまで低下するなど、雇用情勢は緩慢ながらも改善しているが、金融危機前のピーク時(08年)と比較すれば、就業者数は依然80万人以上少ない状態である。

○信用不安に端を発した経済危機を受けて、ギリシャは強力な緊縮政策を敢行した。その結果、ギリシャの双子の赤字は既に解消され、資本逃避への耐性もまた強まったと判断される。フロー面での調整は一服した反面で、ストック面での調整は、低成長の中で停滞を余儀なくされている。

○ギリシャ経済は典型的な支払い能力(ソルベンシー)問題に陥っており、経済の実情に比べると明らかに過剰な債務を背負っている。ゼロ成長下での構造調整に限界がある中で、政府のEUとIMFからの借入に対する支払い負担を政策的に軽減し、財政出動の余力を広げていくことが事態の改善が見込まれる唯一の手段と言えよう。

○現在行われている第三次金融支援は18年にも終了する予定であるが、ギリシャ経済の構造調整を進めていくとともに、成長力を高めていくためには、その後も何らかの形でEUとIMFによる金融支援が不可欠となる。追加融資や元本削減へのハードルが高い中で、最も現実的な手段は、利子減免や支払い延期などの債務リストラだろう。

○ギリシャ国内で次期総選挙を睨んだ攻防が活発化する一方、ユーログループ内でもドイツ財務相を中心に政治的な駆け引きが激しさを増す可能性がある中では、ギリシャ問題が蒸し返されないとも限らない。最終的には合意に至るとしても、その間の不確実性が周辺国の反EU運動に影響を与えないか、そして金融市場の不安定につながらないか、当面注視する必要があると言えよう。

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