輸入実績からみた日米貿易協定の効果~発効後1年の利用状況と関税削減額~

2021/03/19 中田 一良
調査レポート
国内マクロ経済
  • 日本は、日米貿易協定では肉類、穀物、チーズなどの農産品を中心に関税の引き下げ等を行っているが、その内容は環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership、TPP)協定と同等以下となっている。関税引き下げ対象品目の輸入額は2019年時点で米国からの輸入全体の9.7%にあたる。その中心は食料品であり、肉類と穀物の金額が大きい。
  • 日本が日米貿易協定で関税の引き下げを実施した牛肉と豚肉については、日本の主な輸入相手国・地域のうちカナダ、EUなどからの輸入に対する関税は、日本との間の経済連携協定がそれぞれ2018年12月、2019年2月に発効したことを受けて、引き下げられており、米国は競合国と比較すると関税面で不利な状況にあった。しかし、2020年に日米貿易協定が発効して米国の不利な状況が解消したことなどから、日本の米国からの牛肉、豚肉の輸入数量は前年比で増加し、日本の輸入数量に占める米国のシェアも上昇した。
  • 日本が、米国から輸入する牛肉と豚肉にかかる関税の引き下げを行ったことに伴い、米国から輸入する牛肉と豚肉にかかる関税額は、仮定の下で最大で231億円削減されたと試算される。
  • 米国は、日米貿易協定において、工業製品ではマシニングセンタや旋盤などの一般機械や燃料電池、農産品では柿などの果物や緑茶、醤油、混合調味料などで関税引き下げを行っている。米国の関税引き下げ対象品目は日本からの輸入全体の5%程度であり、内訳をみると一般機械が44%を占めている。
  • 日米貿易協定発効後の米国の関税引き下げ対象品目の輸入額は54.2億ドルであり、このうち日米貿易協定を利用して輸入された金額は24.8億ドルであった。この割合を日米貿易協定の利用割合とすれば、45.8%となる。また、日米貿易協定を利用したことに伴う関税削減額は0.7億ドルと試算され、全体の関税額の3.7%に相当する。日本から米国向けの輸出は、関係会社向けの割合が高いことから、在米日系企業が日本から輸入する際の関税負担が軽減されている可能性がある。
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると在米日系企業が輸入にあたって日米貿易協定を利用した割合は米国が締結した他の貿易協定と比較すると低い。この背景には、日米貿易協定は発効から1年しか経過していないことや、米国の自動車及び自動車部品の関税撤廃に関する結論が先送りされていることがあると考えられる。このため、在米日系企業では輸入における日米貿易協定の利用の広がりは今後、限定的となる可能性がある。

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