防衛力強化のための財源確保の課題~必ずしも安定的とは言えない財源への依存~

2023/09/05 中田 一良
調査レポート
財政
変化を捉える【経済】
  • 政府は、防衛力を抜本的に強化する方針の下、防衛関係費を増額し、2027年度の対象経費を2022年度当初予算比で4兆円程度増加させることとした。増加する経費を確保するための財源としてイメージされているのは、歳出改革により1兆円強、決算剰余金の活用により0.7兆円程度、税外収入を財源とする防衛力強化資金から0.9兆円程度、税制措置により1兆円強である。
  • 2023年度に設置された防衛力強化資金は、2027年度までに支出することになる金額のほとんどを確保しているとみられるが、防衛力の強化はそれ以降も続くため、税外収入によって財源を安定的に確保できるかが問題となる。
  • 税外収入の内訳をみるとその大部分は雑収入であり、雑収入の中心は特別会計受入、日銀納付金などである。特別会計からの受入は、2010年代以降は外国為替資金特別会計が中心であり、その規模は毎年度2兆円程度となっている。外国為替資金特別会計からの受入金は一般会計にとって安定的な財源であると言えるものの、税外収入の一部を、防衛力強化資金を通じて防衛力強化の財源に充てることは、従来から一般会計予算に計上されていた特別会計受入金の一定額を防衛関係費に充てることを明確にしているにすぎないと考えられる。税外収入を恒久的に増加させることができなければ、一般会計の他の経費の財源が減少する可能性がある。
  • 防衛力強化のための財源の一つとなっている決算剰余金の推移をみると、2009年度から2014年度にかけては1兆円を超えた一方、2015年度から2017年度にかけては1兆円未満であり、年度による変動が大きい。決算剰余金の発生要因の一つである歳出における不用額は、近年は予算規模が拡大する中、増加傾向にあり、新型コロナウイルス感染拡大対応関連項目を中心に発生している。2022年度は税収が政府の見積もりを上回ったことも決算剰余額の押し上げの一因となった。
  • 決算剰余金は年度によって変動が大きいため、決算剰余金によって今後も防衛力強化のための財源を安定的に確保できるとは限らない。また、歳出改革についてはこれまで以上の取り組みが必要になるものの、具体的な内容は示されていない。こうしたことを考慮すると、防衛力強化のための安定財源が確保されているとは言えず、防衛力強化のための支出の増加に伴い、場合によっては国債発行額が増加する可能性も否定できないだろう。

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