今月のグラフ(2021年4月)高水準にある勤労者世帯の黒字率

2021/04/02 中田 一良
今月のグラフ
国内マクロ経済

総務省「家計調査」によると、2020年の二人以上世帯のうち勤労者世帯の可処分所得は、勤め先収入は前年比+0.1%とほぼ横ばいだったものの、一人につき10万円の特別定額給付金が支給されたことから前年比+4.6%と増加し、2000年以降では最高の49.9万円となった。

消費支出では、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、在宅時間が増加したことから家具などへの支出が増加したほか、特別定額給付金の一部が家電製品などの購入に使われたとみられ、財向けの支出は増加した。他方、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、旅行や外食を中心にサービス向けの支出が大きく減少したため、2020年の消費支出は全体では前年比-5.6%と減少し、2000年以降では最低の30.6万円となった。

この結果、可処分所得から消費支出を差し引いて求められる黒字額を可処分所得で除した黒字率(貯蓄率に相当)は38.7%となり、前年比6.6%ポイント上昇した(図表1)。黒字率の変動要因を消費支出と可処分所得に分けてみると、可処分所得の増加による押し上げが2.8%ポイント、消費支出の減少による押し上げが3.8%ポイントであり、消費支出の寄与が大きかった。各勤労者世帯の可処分所得、消費支出の状況はさまざまではあるものの、平均してみると特別定額給付金の支給により可処分所得は増加したものの、新型コロナウイルスの感染拡大によりサービス向けの支出を行う機会が減少した結果、黒字率が上昇したと言える。

このように勤労者世帯の黒字率は2020年に大きく上昇したが、黒字率は2015年以降、上昇が続いている。2017年から2019年にかけては可処分所得、消費支出がともに増加しており、黒字率の上昇要因は可処分所得の増加であった。

黒字率を世帯主の年齢別にみると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大きく上昇した2020年を除いても、いずれの年齢層でも近年は上昇傾向にあり、2000年以降では高い水準にあった(図表2)。この中で上昇が顕著であるのが60~64歳、65歳以上の世帯である。これらの世帯の黒字率の上昇は、可処分所得の増加によるところが大きく、その背景には就業率が上昇していることがあげられる。政府は労働者が希望すれば70歳までの就業機会を確保することができる環境づくりを推進しており、高齢者の就業率は今後も上昇する可能性がある。

2021年は、可処分所得は特別定額給付金による押し上げ効果が剥落することから前年比で減少する一方、消費支出は持ち直してくるだろう。このため、黒字率は低下すると見込まれる。しかしながら、中長期的には就業率の上昇を背景に、勤労者世帯の黒字率は高い水準を維持する可能性が高いと考えられる。

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