今月のグラフ(2022年1月)資材価格高騰で住宅価格に上昇圧力

2022/01/05 藤田 隼平
今月のグラフ
国内マクロ経済
商品市況

住宅建設に用いる資材価格が上昇している。日本銀行「国内企業物価指数」をもとに、国内の企業間で取引される建設資材(建設用材料)価格の前年比の推移を見ると、2020年中は弱めの動きが続いたものの、2021年に入ると上昇に転じ、直近11月には前年比+18.2%と顕著な伸びとなっている(図表1)。特に寄与が大きいのが木造住宅を中心に利用される製材等の「木材・木製品」で、前年比+84.7%と大幅上昇となっている。また、マンション等を中心に利用される鋼材等の「鉄鋼」は前年比+30.7%、鉄骨等の「金属製品」は同+6.8%と木材・木製品ほどではないものの高めの伸びとなっている。

世界的に建設資材の価格は上昇しており、その背景には新型コロナ後の落ち込みから世界経済が急速に回復する中で需要の増加に供給が追い付かず、需給がひっ迫したことがある。木材については、新型コロナの感染拡大を受けた製材所の休業や需要減を見越した生産調整等によって供給が抑制される中、テレワークの普及で特に米国で持家需要が強まり、住宅向けの需要が増加したことで需給のタイト感が強まった。同様に鋼材についても、特に中国で政府の景気刺激策によってインフラ投資が加速したことで需要が増加し、その原材料である鉄鉱石や鉄スクラップの需給もひっ迫したことが価格上昇の原因となった。

こうした状況に円安や国際物流のひっ迫による輸送コストの増加といった要因も重なり、建設資材の輸入価格は大きく上昇している。輸入財の価格(通関段階における荷降ろし時点の価格)動向を表す日本銀行「輸入物価指数」を見ると、2021年11月の「木材・木製品・林産物」の輸入物価(円ベース)は前年比+81.4と1979年11月の同+95.1%に次ぐ約42年ぶりの高い伸びとなっている。同様に、「金属・同製品」の輸入物価(円ベース)は前年比+58.3%と、こちらも1980年3月の同+67.3%に次ぐ高い伸びとなっている。

木材や鋼材価格の高騰は、「ウッドショック」や「アイアンショック」と呼ばれ、国内の住宅市場への悪影響が懸念されている。図表2は、人件費等も含めた総合的な建設資材価格の変化を表す「建設工事費デフレーター」と新しく工事が着工した住宅の「工事費単価(平米当たりの工事費額)」の推移を表している。これを見ると、足元で住宅の建設工事費デフレーターは建設資材価格の上昇を反映し急上昇している一方、工事費単価は横ばいにとどまっており、建設資材価格の上昇の影響がまだ住宅の建設費にまで及んでいないことが分かる。契約済みの案件等で価格転嫁が難しく、企業がコストの増加分を負担しているケースもあるとみられるが、過去の推移を見ると、工事費単価は建設工事費デフレーターに対して数か月のラグを伴って連動していることから、今後、建設資材価格の上昇が徐々に工事費に転嫁されることで、住宅価格の上昇圧力は強まっていくと考えられる。全国建設労働組合総連合(全建総連)が2021年8月に行った「ウッドショックによる工務店影響調査(第2回)」によれば、工事金額の増加やウッドショックの影響を見極めようと購入を手控えている購入者がいる等の理由によって受注が悪化しているとの声も挙がっており、今後、住宅市場への悪影響が深刻化していく懸念がある。

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