聴覚障がいのある社員の育成支援に向けて~聴覚障がいのある社員の働き方に関する企業、本人へのアンケート調査結果より~

2019/05/10 横山 重宏、大野 泰資
雇用・労働政策
ダイバーシティ
独自調査

<提言>

1. 意欲の高い聴覚障がいのある社員へのスキルアップの機会を増やすべき

聴覚障がいのある社員の4割程度が、教育研修にもっと参加したいと考えている。一方で、企業側は、聴覚障がいのある社員に対する今後の教育研修を「現状程度」と考える割合が8割と高く、「増やしたい」は1割程度に留まっており、本人の意欲との間にギャップがみられる。企業はこのギャップを埋めるためにも、意欲のある聴覚障がいのある社員への教育研修、あるいは自己啓発の機会を増やすことが望ましい。
また、現在参加している教育研修は「仕事上の新しい知識等に関する研修(社内)」が約4割で高く、「スキルアップに関する研修(社内)」は約3割である。スキルアップに関する研修の充実がより必要ではないか。

2. 聴覚障がいのある社員が参加できる外部の教育研修増加に向け政策支援を充実すべき

現在、聴覚障がいのある社員が参加している研修は社内中心で、社外研修に参加する機会はほとんどない。
聴覚障がいのある社員が教育研修に参加している企業の半数が「参加できる社外の研修が少ない」が最も大きな課題と考えている。また、2割程度は「参加するための支援体制を作ることが困難」と考えている。
職場の中では聴者障がいのある社員が1人や2人のことも多く、企業が聴覚障がい者の教育研修に費用や人材を充てることが困難なこともあり得る。今後の聴覚障がい者の雇用面での活躍を推進する観点から、聴覚障がいのある社員が教育研修を受ける機会が増えるよう政策的な支援を充実すべきではないか。

3. 聴覚障がいのある社員の昇進・昇格を含めた中長期のキャリア形成を支援すべき

現在、聴覚障がいのある社員のほとんどが「無役職」である。また、聴覚障がいのある社員が「昇進・昇格の条件としての研修」に参加している割合は極めて低い。聴覚障がい者のキャリア形成について、「管理的な仕事、昇進・昇格を念頭に育成を図っている」、「中長期のキャリア形成支援を行っている」企業の割合は1割前後と低い。また、聴覚障がい者の生産性向上が課題となっている企業は多い。
聴覚障がいのある社員には、勤続年数が10年を超える者が4割以上いる。企業は聴覚障がいのある社員が、生産性を向上させ活躍できるよう、昇進・昇格を念頭に入れて、中長期的なキャリア形成の支援に力を注ぐべきである。

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