在宅勤務者の仕事のモチベーション・効率性に影響を及ぼす要因の検討 在宅勤務は何をもたらすか⑤

2021/07/01 横山 重宏、野田 鈴子
テレワーク
在宅勤務は何をもたらすか
独自調査
  • 本稿では、2020年10月時点で在宅勤務を行っている者を対象に実施したアンケート結果をもとに、在宅勤務を行う労働者のモチベーションに対して影響を及ぼす要因についての検討を行った。
  • 在宅勤務を効率的・効果的に進める上での重要な会社の取組としては、「在宅勤務のPCスペック増強、通信環境増強、セキュリティ確保への会社の整備」が40.9%と最も高かった。これに次いで「在宅勤務でのPC作業やWEB会議などに関するICTスキル獲得のための研修や、問い合わせ対応の整備」(21.7%)となっており、上位2項目からは、在宅勤務でのPCスペック増強等、ICTスキル獲得等といったハード面の整備と、その環境を生かせるソフト面の支援が在宅勤務を効率的・効果的に進める上で重要度が高いことが確認できた。
  • 子どもがいる場合、仕事と家事・子育ての両立において、在宅勤務を効率的・効果的に進める観点からは、勤め先での推進・支援が重層的に行われることが必要と考えられる。
  • 部下・メンバーからみて、仕事のモチベーション・効率性において重要な上司・リーダーの取組としては、「上司からの業務指示が明確である」が29.8%で最も高い割合となっている。これに次いで「上司はあなたの仕事ぶりをよく見ている・把握している」(25.7%)、「同僚との仕事上の相談機会は十分にある」(20.9%)で重要とする割合が高くなっている。在宅勤務においては、他者の仕事ぶりが見えづらくなる可能性があり、そうした中でも部下・メンバーがモチベーションを高く持って効率的に仕事を進めるためには、上司・リーダーが業務指示を明確にするとともに、仕事の成果につながる仕事ぶりを積極的に把握する行動・取組が非常に重要であると言える。
  • 一方で、こうした重要と思う取組について、実際に自分の上司・リーダーが「取り組んでいる」割合は、「上司からの業務指示が明確である」については、29.8%のうち16.8%、「上司はあなたの仕事ぶりをよく見ている・把握している」については25.7%のうち12.1%であり、上司・リーダーの取組が十分とは言えない認識が示されている。特に、上司・リーダーが在宅勤務中心の場合、部下・メンバーへの業務指示・期待役割の明確化から業務の状況把握、コミュニケーションなど、マネジメント全体のあり方に課題が生じやすいことがうかがわれた。課題解決に向けて上司・リーダー本人に加えて、勤め先の企業等が一体となって取り組む必要があると考えられる。
  • 次に、在宅勤務を行う部下・メンバーは、現在の仕事への意欲や効率性について、高い・低いなど自分の状況を明確に認識している人では、高低にかかわらず、仕事のモチベーションや効率性にかかる上司・リーダーの取組への関心と関連していることがうかがわれる。在宅勤務者がいる勤め先企業等では、こうした仕事への関心が高い人材に対して、上司やマネジメントの関わり方をしっかりと検討する必要があると考えられる。

続きは全文紹介をご覧ください。

【シリーズ「在宅勤務は何をもたらすか」タイトル一覧】

① 在宅勤務者の人数規模と属性
② 在宅勤務に伴う家事・育児時間及び運動時間の変化
③ 在宅勤務者のメンタルヘルスの現況
④ 在宅勤務に伴う「体力」の低下
⑤ 在宅勤務者の仕事のモチベーション・効率性に影響を及ぼす要因の検討・・・<本稿>
⑥ 在宅勤務を成功させるために必要な企業の取組

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