令和4年度 スポーツ行政に関する実態調査報告

2023/08/14 日隈 崇秀、大垣 俊朗、大和田 康一
スポーツ
スポーツ振興
スポーツ施設

東京2020大会開催やスポーツ庁「第3期スポーツ基本計画」策定(令和4年4月)をはじめ、スポーツをとりまく環境が大きく変化するなか、地方公共団体においては、スポーツ行政を効果的に推進していくことがより一層求められています。

こうした状況を踏まえ、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「スポーツ戦略室」では、全都道府県、市区町村を対象として、スポーツ行政の実態と課題に関する調査(令和4年度)を実施しました。

本年度の調査では、地域スポーツ推進計画の策定・運用状況や、施策・事業の展開状況、今後の施策展開に向けた課題認識、令和5年度以降の運動部活動の地域移行化に関する検討状況の実態と課題について収集・整理しました。

調査結果概要

■調査対象:全国の全都道府県47団体、全市町村1,718団体、東京都特別区23団体、計1,788団体

■回収数(率):652団体(36.5%)

■スポーツ推進(振興)計画の策定・運用状況

  • スポーツ推進計画の策定状況は、「独立計画として策定している」団体が40.2%で、「現在策定しておらず、今後も策定予定はない」団体が26.2%、「他の計画の一部を位置づけている」団体が22.5%であった。
  • 未策定団体の策定予定時期は、「向こう1~2年」が35.2%、「向こう3~4年」が16.9%、「当面予定なし」が31.0%であった。
  • 策定済団体のスポーツ推進計画の改定予定は、「2024年度」の改定予定が13.7%、「2025年度」が16.1%、「2026年度以降」の改定予定が35.0%であった。
  • スポーツ推進計画と連携・関連している計画・条例は、「総合計画」が81.2%、「生涯学習・教育に関係する計画・条例」が47.9%、「健康増進・保健に関係する計画・条例」が27.6%であった。
  • スポーツ推進計画の進捗管理のために設定している指標は、「スポーツ実施率」が56.2%、「スポーツ施設の利用人数」が42.5%、「地域スポーツ教室の開催回数・参加者数」が28.1%であった。
  • 設定された指標を把握する方法と頻度は、「他の計画等との行政評価と合わせた実施」が35.2%、「中間見直し期に合わせたアンケート実施」が21.5%、「毎年のアンケート実施」が17.1%であった。
  • 設定された指標の進捗状況の評価方法は、「スポーツ推進審議会における評価実施」が42.5%、「関連又は上位計画の行政評価と併せた実施」が41.3%であった。
  • 計画の策定、改訂・改定を検討するうえで課題として感じている点は「新たなスポーツ基本計画の考え方の反映方法がわからない」が39.6%、「効果的な進捗管理方法がわからない」が34.6%、「スポーツ分野以外の領域と連携が必要な施策方針を示しにくい」が30.6%であった。

■スポーツ関連施策の所管・事業

  • スポーツ施策を実施する際の主担当の所管は、「教育委員会内に位置するスポーツ推進・振興課」が71.0%で最も多く、次いで「市長部局内に位置するスポーツ推進・振興課」が20.9%であった。
  • 連携している関係課は、「医療・保健関連部局」が41.4%、「公園管理関連部局」が40.0%、「観光商工・産業振興関連部局」が39.9%であった。
  • 連携している地域団体は、「小・中・高等学校」が64.3%、「総合型地域スポーツクラブ」が59.5%、「施設指定管理者・PFI事業者」が47.5%であった。
  • スポーツ関連施策を実行・展開するうえで課題として感じていることは、「新型コロナウイルス感染症の影響による従来の施策・事業の展開の制限」が60.4%、「施設の老朽化」が56.9%、「事業の担い手不足」が50.5%であった。

■スポーツ施設の保有・管理状況

  • 保有している施設の所有・運営形態について、「自治体所有・運営施設」が82.5%、「指定管理者制度による民間運営施設」が60.3%であった。
  • 保有施設の設置年については、「1976年~1985年設置施設」を保有する団体が74.8%、「1986~1995年設置施設」が73.9%となっており、施設の老朽化の進行がうかがえる。
  • ほぼ全ての団体(95.6%)で学校体育施設の開放事業が実施されている。開放事業において学校体育施設を活用している団体等は、「スポーツ少年団」が82.2%、「一般市民・近隣住民」が78.2%、「保護者・PTA活動での利用」が67.3%であった。
  • スポーツ施設に併設されたスポーツ以外の行政施設は、「サードプレース(居心地の良い、交流等が生まれる広場等)が18.9%、「文化施設」が15.6%、「学校教育施設」が12.3%であった。
  • 保有施設の維持・管理上の課題として、「老朽化施設の維持管理費上昇」が92.3%、「施設利用者減少による採算確保」が23.8%、「競技団体の要望に応える施設機能維持」が23.5%であった。
  • スポーツ施設のストック適正化ガイドラインに基づく個別施設管理計画を策定している団体は53.8%であった。

■スポーツをささえる人材の育成・支援状況

  • スポーツ指導者やスポーツボランティア等を育成するための支援を実施している団体は45.4%であった。スポーツをささえる人材を育成・支援するための課題は、「人材の固定化・高齢化」が84.2%、「人材不足」が73.2%であった。

■スポーツ推進に関する新たな取組・他分野との連携

  • スポーツ推進に関する新たな取組の実施状況について、現在行っている取組は、「スポーツを活用した健康増進」が81.3%、「プロスポーツと地域振興」が46.9%、「パラ(障害者)スポーツ・ユニバーサルスポーツ」が34.2%であった。
  • 他分野との連携における課題は、「庁内連携・調整」が50.2%、「施策・事業の責任主体明確化」が39.4%であった。

■部活動の地域移行化

  • 部活動の地域移行化についての庁内検討の場は、「設置済」が35.3%、「準備段階」が34.5%、「未検討」が29.4%であった。
  • 庁内検討が進んでいない理由は、「複数部局の調整」が24.5%、「上位部局等からの指示待ち」が24.2%であった。
  • 部活動の地域移行化に向けた課題は、「指導者・支援者確保」が83.7%、「総合型地域スポーツクラブ等との協議・調整」が65.8%、「学校・教育委員会との協議・調整」が55.2%であった。

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