今月のグラフ(2019年11月)知財投資が下支える米国の設備投資

2019/11/07 中塚 伸幸
今月のグラフ
国内マクロ経済

米国の設備投資が停滞している。GDPベースの設備投資は、4-6月期が前期比年率でマイナス1%、7-9月期は同じくマイナス3%と、2四半期連続でマイナスとなった(図表1の折れ線グラフ)。世界経済の減速に加え、米中摩擦による不透明感の高まりで、企業が思い切った投資に踏み切れないでいることがうかがえる。

設備投資額を分野別にみると、建物などの「構築物」が約2割、「機械・機器」が5割弱、無形資産である「知的財産生産物」が3割強という構成になっている。このうち、構築物と機械・機器、つまり有形資産への投資が足もと特に弱い。構築物は、エネルギー関連の落ち込みなどから2四半期連続で2ケタのマイナスになっており、機械・機器も7-9月期は4%のマイナスである。トランプ政権による18年1月以降の減税措置(購入設備の即時償却)も、当初の数四半期は設備投資底上げに効果があったが、その後は息切れした感がある。

こうした中で堅調を維持しているのが、知的財産生産物(以下、知財)への投資である。図表1の棒グラフは、GDPベースの設備投資の分野別増加寄与度(前期比年率)を示しているが、濃い色の「知財」はプラスの伸びを維持しており、19年に入ってからも全体の下支え要因となっている。「知財」の内訳は、「ソフトウェア」と「研究開発」が概ね半々であるが、どちらの伸びも高い。情報技術が急速に進展する中で、新たな製品・サービスの開発に向けた研究開発が活発になっていること、また消費や物流にとどまらず製造過程においてもデータ活用などソフト面の装備が重要になっていること、などが知財投資の背景にあろう。

図表2は、こうした知財投資額(実質GDPベース)の推移を日米で比較したものであるが、2000年代に入ってから足もとまでの期間で米国の投資額は約2倍になっているのに対して、日本の投資額は2割程度の増加にとどまっている。一概に比較できない部分もあろうが、知財への投資では米国のほうがわが国よりも積極的であるといえよう。知財など「無形資産」は企業の競争力を左右するうえで、今後ますます大きな要素となろう。先進技術を取り込み、イノベーションを生むために、わが国企業にも活発な知財投資が求められる。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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